🔷聖書の知識109-ナホム書注解 ー ニネベ滅亡の預言
殺される者はおびただしく、しかばねは山をなす。死体は数限りなく、人々はその死体につまずく。これは皆あでやかな遊女の恐るべき魔力と、多くの淫行のためであって、その淫行をもって諸国民を売り、その魔力をもって諸族を売り渡したものである。(ナホム3.3~4)
【概観】
ナホム書はユダヤ教では「後の預言者」に、キリスト教では十二小預言書の7番目に位置し、全3章から構成されます。
著者はナホムという名の人物とされ、「ナホム」とは「慰める者」という意味で、預言の主題はニネベの陥落とアッシリアへの裁きです。
著者である預言者ナホムはエルコシュ出身です(ナホム1)が、ナホム自身については詳しいことが殆ど分かっていません。
ナホム書3章8~10節に、エジプトのテーベの滅亡が記されているので、紀元前663年より後であり、また同書2章にニネベの陥落が預言されているので、ニネベが陥落した紀元前612年より前であると考えられます。
『ナホム書』は3章から成っており、ニネベ滅亡の預言と陥落(1~2章)、ニネベ陥落の理由(3章)という構成になっており、ナホムの厳しい預言は『ヨナ書』と比較されることがあります。
【ナホム書の内容】
<神の二つの性質ー義の神と愛の神>
先ずナホムは、神の二つの性質を語ります。妬み、復讐し、怒る神(1.2)、即ち義の神と、怒ることおそく、恵み深く、なやみの日のとりでとなる神(1.7)、即ち愛なる神です。
「主はねたみ、かつあだを報いる神、主はあだを報いる者、また憤る者、主はおのがあだに報復し、おのが敵に対して憤りをいだく」(1.2)
「主は恵み深く、なやみの日の要害である。彼はご自分を避け所とする者を知っておられる」(1.7)
<ニネベ滅亡の預言>( 1 . 9 ~ 15 )
次に、ニネベ(アッシリヤ)の滅びが予告されます。
「あなたの名は長く続かない。わたしはあなたの神々の家から、彫像および鋳造を除き去る。あなたは罪深い者だから、わたしはあなたの墓を設ける」(1.14)
一方、ユダに対して、慰めの言葉をかけられます。
「見よ、良きおとずれを伝える者の足は山の上にある。彼は平安を宣べている。ユダよ、あなたの祭を行い、あなたの誓願をはたせ。よこしまな者は重ねて、あなたに向かって攻めてこないからである」(1.15)
<ニネベの陥落>( 2 : 1 ~ 13 )
遂にニネベは陥落し、神はニネベを滅ぼされました。
「万軍の主は言われる、わたしはあなたの戦車を焼いて煙にする。つるぎはあなたの若いししを滅ぼす。わたしはまた、あなたの獲物を地から断つ。あなたの使者の声は重ねて聞かれない」(2.13)
ニネベの陥落(ジョン・マーティン画・版画) アッシリア帝国の最大版図
<ニネベ陥落の理由>
ニネベは、「流血の町」であり、虚偽、略奪、強奪などニネベの残忍さは、歴史が証明しています。
「わざわいなるかな、血を流す町。その中には偽りと、ぶんどり物が満ち、略奪はやまない」(3.1)
また、ニネベは、悪魔的宗教(オカルト的宗教)を取り入れ(4〜7節)、麗しい町であるが、遊女になり下がって、周辺諸国に悪魔的宗教を広める役割を果たしたというのです。
「これは皆あでやかな遊女の恐るべき魔力と、多くの淫行のためであって、その淫行をもって諸国民を売り、その魔力をもって諸族を売り渡したものである」(3.4)
ニネベ陥落の第3の理由は、エジプト・テーベへの残虐な行為であり、テーベはアッシリアによって滅びます。
「しかし、これもとりことなって捕えられて行き、その子供もすべてのちまたのかどで打ち砕かれ、その尊い人々はくじで分けられ、その大いなる人々は皆、鎖につながれた」(3.10)
こうして、このような残忍な行為のゆえに、ニネベは陥落することになりました。(3.11~19)
以上、ナホム書を解説しました。ナホム書には、功績のある者には必ず報い、罪をおかした者は必ず罰するという信賞必罰の厳しい思想があります。次回は、ハバクク書の解説です。(了)