ハガイ書 注解 - 神殿の再建を促す
更新日:8月30日
🔷聖書の知識112-ハガイ書注解 神殿の再建を促す
わたしはあなたがたと共にいると、万軍の主は言われる。わたしの霊が、あなたがたのうちに宿っている。恐れるな。(2.4~5)
プロローグ
『ハガイ書』は、ユダヤ教では「後の預言者」に、キリスト教では12小預言書に分類され、2章からなる短い文書です。ハガイとはヘブライ語で「祝祭」という意味です。
伝統的に、著者は、バビロン捕囚後の最初の預言者ハガイであるとされ、ハガイ書2章1節に「ダレイオス王(在位 前522年~前486年)の二年に主の言葉がハガイに臨み、ユダヤ総督ゼルバベルと大祭司の子ヨシュアに告げよ」とあるので、前520年にハガイは召されたことになります。捕囚後の預言者としては、他にゼカリヤとマラキがいます。
時代背景としては、バビロン捕囚から帰還した時代であり、総督ゼルバベルに率いられて帰還した約5万人は、神殿の再建を開始しました。基礎は2年後に完成しましたが、サマリヤ人と周辺民族の妨害で工事は中断を余儀なくされ、その状態がダリヨス大王の代まで続きました(エズラ4.24)。 つまり、帰還 → 神殿再建開始 → 周囲からの妨害 → 工事中断という状態になっていました。そこで登場するのがハガイです。
【アウトライン】
テーマとしては、エルサレム神殿の再建(紀元前515年)がその預言の主題となっています。 ハガイ書はバビロン捕囚から帰還したユダヤ人に、神殿再建を促した預言書で、「自分たちの生活の再建だけに目を向けず、まず神の家を建て直せ」という預言者ハガイのメッセージです。
1章で、ハガイは、神殿再建の呼びかけをします。
当時、帰還した民は自分たちの生活を維持するのがやっとであり、焼け崩れた神殿を再建する余裕がない状況にありました。しかしハガイは次のように語ります。
「主の家はこのように荒れはてているのに、あなたがたは、みずから板で張った家に住んでいる時であろうか」(1.4)
つまりハガイは、自分たちの生活が安定してから主の家(神殿)のことを考えようというのは主客転倒である、優先順位を間違ってはならないと諌めました。 これは、かってビューリタンがアメリカを建国する際に、先ず神のために教会を建て、次に子孫のために学校を建て、最後に自分たちのために丸太小屋を作った故事を想起させられます。 こうしてイスラエルの民は、悔い改めて、神殿再建に取り掛かかりました。
「そして主は、総督ゼルバベル、大祭司ヨシュア、および残りのすべての民の心を、振り動かされたので、万軍の主の家の作業にとりかかった」(1.14~15)
(預言者ハガイのロシア正教イコン)・エルサレム第2神殿(模型)
2章では、神殿再建が始まったものの、年長者たちは、「これは昔のソロモン神殿に比べたら、あまりにも小さくて貧弱だ」と感じました。そこでハガイは励まします。
「すべての民よ、勇気を出せ。『わたしはあなたがたと共にいる』、と、万軍の主は言われる。わたしの霊が、あなたがたのうちに宿っている。恐れるな」(2.4~5)
ここに記されている、神が「共にいる」(1.13、2.4)という言葉は、まさに聖書全体を貫く中心的なメッセージであり、聖書は様々な場面で「神様は私達と共におられる」ことを語っています。
かって神はモーセを召され、「わたしは必ずあなたと共にいる」(出エジプト3.12)と言われ、ヨシュアに対しても、「わたしは、モーセと共にいたように、あなたと共におるであろう」(ヨシュア記1.5)と明言されました。特に兄エソウの怒りを避けてハランの地に向かうヤコブが、途上石を枕に仮寝した時見たベテルの夢「 わたしはあなたと共にいて、あなたを守り、わたしは決してあなたを捨てない」(創世記28.15) は有名です。
そして非常に重要な預言をします。「この後の神殿の栄光は、昔の神殿にまさる」(ハガイ2.9)。ここには、単なる建築物としての神殿を超えて、将来の神の救い・メシア的希望へとつながる思想があります。
さらに2章では、「もう一度、天と地と海と陸とを揺り動かす」(2.6)という言葉が出てきます。これはハガイ書を単なる「神殿建設の勧告」以上のものにしています。目の前では小さな第二神殿を建てている。しかし預言者の視野は、イスラエルの回復 → 神の臨在 → 諸国民 → 神の最終的な支配へと広がっていくのです。
ハガイは民とゼルバベルに祝福の約束をしました。ハガイは同時代に活躍した預言者ゼカリヤと共に、神殿建設後にやってくるであろうゼルバベルをメシヤ的王とする希望の時代を夢見ました。
「万軍の主は言われる、シャルテルの子、わがしもべゼルバベルよ、主は言われる、その日、わたしはあなたを立て、あなたを印章のようにする。わたしはあなたを選んだからであると、万軍の主は言われる」(2.23)
まとめるとハガイ書は、神殿を建てなさい」というだけの書ではなく、その核心は、「捕囚から帰ってきた民よ、自分自身の生活だけを再建するのではなく、神との関係を中心に据えなさい。神殿の再建は、その回復の象徴である」というところにあります。
そしてハガイの預言は、ゼカリヤ書、エズラ記、さらに後のメシア思想へとつながっていきます。即ち、「モーセ五書→九書→捕囚→第二神殿時代→メシア思想」という流れで見ると、ハガイ書は非常に重要な「橋」のような書です。
以上、ハガイ書を解説しました。神はハガイに三度臨まれ、捕囚後のイスラエルの民を励まされました。次回は、ハガイと同時代に活動したゼカリヤ書を解説いたします。(了)



