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小林常雄著『ガンの真相と終焉』を読んで

○つれづれ日誌(令和3年10月20日)小林常雄著『ガンの真相と終焉』を読んで


この度、美浜クリニック・国際がん予知予防センター長の小林常雄医師(元一心病院副院長)が、著書『ガンの真相と終焉』(創藝社)を出版され、自らのがん治療に関する持論を述べられました。この度、NPO未来戦略フォーラム代表の大脇準一郎さんから、本書を贈呈して頂き、そのお礼を兼ねて読後感をしたためる次第であります。


実は筆者は、京都大学(大学院)で苦学しながら学んでおられた時の、若き日の小林医師をよく知っております。当時3畳の狭い部屋で、医学書の山と取り組んでおられた姿をまざまざと思い出します。半世紀以上を経て、本書を通して小林医師と再会することが出来、大変嬉しく、また目に見えない不可思議なご縁を感じている次第です。



【がんは今や国民病】


さて、世にいう「七大生活習慣病」とは、がん(悪性新生物)、心疾患(心臓病)、脳血管疾患(脳梗塞)、高血圧性疾患(高血圧症)、糖尿病、肝疾患(肝硬変)、腎疾患(慢性腎不全)と言われています。その中でも、「がん・心臓病・脳梗塞」は三大疾病と言われ、その中でも、がんは最大の疾病となっています。そう言えば筆者も心臓病を患い、心臓冠動脈には5本のステント と3本のバイパスが入っています。お陰様で今は快調です。


最近の厚生労働省の統計によれば、日本人の死因順位の第1位はがん(悪性新生物)で全体の28.7%、第2位は心疾患で15.2%、第3位は脳血管疾患で8.7%となっています。つまり、三大成人病だけで日本人の死因の約52%を占めていることになります。


そして今や「がん」は、日本人の二人に一人は患う病気と言われ、最も厄介な国民病でありますが、いまだに特効薬やワクチンなど、がん治療の決め手は見つかっておらず、当に「死に至る病」としてお手上げ状態にあることは周知の事実であります。 筆者の実姉は胃癌で他界し(67才)、同じ戌年の兄は80才で肺癌を患い、肺を一個摘出しました。従って、がんは筆者にとって人事ではありません。


この死に至る病に対し、小林医師は本書において、画期的な治療法を提言されました。従来、「がんは予知・予防できない」「がんは悪性腫瘍である」とされてきた固定観念に対し、小林医師は、「腫瘍マーカー検診(TMCA検査)を活用すればがんを予知・予防できる」「がんは悪性腫瘍ではなく、ミトコンドリア呼吸代謝異常で起こる新生物であり、免疫力・自然治癒力で正常細胞に戻せる」との大胆な提言であります。


そしてこの小林医師の確信は、2.6万人にのぼる治療経験、半世紀に渡る研究から来る科学的知見、そして何よりもがん撲滅に人生をかけた「執念」によって裏付けられています。


【がん治療へのコペルニクス的提言】


小林医師は、「がんは遺伝子の誤作動、突然変異による悪性腫瘍である」との従来の説は、人間の免疫力、自然治癒力を無視した間違った考え方であり、がんの正体は『ミトコンドリアの呼吸代謝異常』で起こる結果であると明言されました(『ガンの真相と終焉』創藝社P12~22) 。そしてこれらの見解は、単なる小林医師の思いつきでも、思い込みでもなく、ノーベル医学賞級の学者らの研究によっても裏付けられている科学的知見であることが、本書で述べられています。


小林医師は、対症療法ではなく総合医療(統合医療)を目指してこられ、人間の免疫力や自然治癒力を重視した治療をされてきましたが、これは、人間を尊厳性を有する「人格的生命体」と見る小林医師の人間観から来ているのではないかと思料するものです。実際小林医師自身、若き頃、何度か生死の難病を克服したこと、霊的癒しの賜物を持った先祖がいたこと、高校時代、自殺を考えて山に入ったところ「死ぬな、人々を救え」との啓示を聞いたことなど、いくつかの「超自然的体験」があり、これらの原体験からくるインスピレーションが、小林医師の医学観の基底にあるのではないかと思われます。


【がんの処方箋】


さて、小林医師のがん処方箋は、自身が開発した「TMCA検査」(腫瘍マーカー総合検診法)でのがんの予知・予防、そしてその上に立った免疫力・自然治癒力を生かした統合治療であります。確か、信者の長友明美さんも この治療の恩恵を受けたと聞いています。


<TMCA検査とは>


がんの早期発見はがん撲滅の決め手ですが、従来のレントゲンやCT検査など画像診断ではがんの見落としが多々あり、限界があると小林医師は指摘されています。そこで、がんの予知・予防・再発予防をより完全にするために小林医師が開発したのが「TMCA検査」(腫瘍マーカー総合検診法)であるというのです。


「TMCA検査」は、採血と採尿だけでがんの早期かつ正確な発見が可能になるというもので、既に2万6千人に実施したということです。その詳細については、本書や小林医師の説明に譲るとして、この方法で従来の画像診断で見落としていたがんが発見されています。


<がんの治療>


従来のがん治療は、先ず画像診断(病理診断)でがんを発見し、次に外科手術・放射線治療・制癌剤投与により解決するというのが基本方針とされています。これは、がんが遺伝子ミスによる悪性腫瘍であるとの認識からくる治療方針であるというのです。つまり今までがんの原因は、DNAに傷がついて突然変異が起こり、転写や翻訳の途中でミスが起こって異常が発生すると、制御を失って勝手に増殖・転移するがん細胞(悪性腫瘍)にあると考えられてきました。


これに対し小林医師は、がんはミトコンドリア呼吸代謝異常で起こる「新生物」であり、生物学的に診断すべきであるとし、ミトコンドリア代謝にがん抑制遺伝子を加えて、「がん細胞は正常細胞に戻せる」と主張されます(『ガンの真相と終焉』P24~29) 。ちなみにミトコンドリアとは、細胞内で酸素呼吸を専門で担っている細胞内小器官であり、ミトコンドリアの酸素呼吸の回復が決め手となるというのです。


即ち、がんの遺伝子説は間違いで、がんは遺伝せず、免疫力、自然治癒力を生かした総合的視点が必要だというのです。無論小林医師は、がんの切除手術を無碍に否定されているわけではありません。


【がんは食生活習慣病である】


本書は、筆者にとって健康を考えるよい機会なりました。何故なら、がんは「食生活習慣病」であり、食生活の改善が、がん(健康)に有効であると述べられているからです(同書P70) 。


がんは遺伝子病ではなく、食生活習慣病であり、がんのリスク要因には、ビタミンCをはじめ、ビタミンA、ビタミンD、サイクリックAMPの低下、即ちビタミン不足が原因であるとし、これらを含む食生活が大切だと言われます。ビタミンAは、サツマイモ、ニンジン、カボチャ、うなぎなど、ビタミンDは、日光浴、アジ、サンマ、サバなどに多く含まれ、また漢方薬の投与も有効とされています。


またがん細胞は、免疫力の低下が発症に影響があり、ミトコンドリアの復活には熱が関与しているといいます。特に、低酸素・低血圧・低体温は悪いとされ、冷たい飲み物を控えること、腸内細菌を増やす納豆、ヨーグルト、味噌汁、酢を摂取すること、更にニンニク、キャベツ、大豆、ショウガ、ニンジン、タマネギなどが推奨されます(同書P60~69)。


【がん撲滅の福音を!】


もとより筆者には、医学的な専門知識はありませんが、小林医師が言われるように、人間の「免疫力・自然治癒力」を高めることの大切さはよく理解でき、共感できます。かって不治の病とされた天然痘やハンセン病(癩病)でさえ特効薬が生まれ、完治する病気になりました。現在、猛威を奮ってきた新型コロナもワクチンの開発で収束に向かいつつあり、難病の王者たるがんの決め手となる処方箋が待たれるところです。


もっともがんは、細菌やウィルスといった外から入ってくるものが要因ではなく、細胞自体の異変に基づくものであり、その解決には予想を越える困難が伴うと思われます。奇しくも小林医師が言われるように、飛躍的な科学的発見は、天動説から地動説への転換といったコペルニクス的な発想の転換が必要であります。


筆者の学生時代からの友人である柳田敏雄氏(大阪大学大学院生命機能研究科特任教授・理化学研究所生命システム研究センター長)は、ヒトの分子は指示どおり機械的に動くというこれまでの常識を覆し、自ら試行錯誤しながら進む道を探すという「揺らぎ」の基本概念を確立し、生命科学分野でノーベル賞級の発見をしましたが、これはやはりコペルニクス的発想の転換でありました。


同様に小林医師が、従来の発想に囚われず、がんを生物学的見地、即ち生命体全体から鳥瞰的に研究され、道半ばとは言え、がん撲滅に尽力されている姿には深く敬意を表するものです。 昨年、他界されましたが、心からご冥福をお祈りします。(了)

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