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新約聖書の解説⑭ テサロニケへ人の第二の手紙

🔷聖書の知識141ー新約聖書の解説⑭ーテサロニケへ人の第二の手紙


彼は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して立ち上がり、自ら神の宮に座して、自分は神だと宣言する(2.4)


【概要】


『テサロニケ人への第二の手紙』は、使徒パウロがテサロニケの信徒たちに宛てた書簡の一つであります。ただし、『テサロニケ人への第一の手紙』がほぼ異論なく真正パウロ書簡と認められているのに対し、2テサロニケ書は真正書簡か擬似パウロ書簡かで、諸説あります。


即ち、第1章1節には、著者としてパウロ、および同行者のシルワノ、テモテの名がありますが、著者問題については、パウロが生前に執筆した「真正書簡」とする説、パウロの死後に別人が執筆した「擬似書簡」とする説のほか、パウロの生前にその意を受けて近しい人物が書いた「代筆説」などがあります。しかしここでは、パウロ書簡との前提に立って話しを進めます。


本書簡は、1テサロニケ書に1年くらい遅れて(51~52年)コリントで書かれたと思われます。


【テーマ】


本来、この書簡の主題は、誤った終末論に惑わされることなく、「落ち着いて日常の労働に励む」ことの大切さを説くことにありました。しかし、後世において、そこから離れ、中世の終末論や反キリスト像の発展に影響した文書であるとともに、共産主義と親和的なスローガン「働かざる者食うべからず」に結びつくこととなった文書でもあります。


つまり、本書簡のテーマは、「終末が訪れている」と信じて浮き足立つテサロニケの信徒たちに対して、キリストの「再臨に至る筋道」を示すことで、それが「まだ来ていない」ことを確認するとともに、(いつ来てもよいように備えつつも)落ち着いて日々の労働に励むことの大切さを諭すことにあります。


また、日々の労働の大切さを説いた言葉「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」(3.10)はキリスト教の労働観に影響を及ぼしただけでなく、20世紀にはレーニンによる改変を経て、「働かざる者食うべからず」という不労所得による搾取を否定するスローガンとして、ソ連などの共産主義諸国の憲法にも盛り込まれました。これが日本国憲法の勤労の義務に繋がったという説もあります。


またもう一つの論点として、「終末の遅延」に関する意識の問題があると言われています。2テサロニケ書が「終末の遅延」の認識、すなわち本来ならば来ているはずの終末がまだ来ていないという認識のもとで書かれたかどうかについても議論があります。


【構成】


本書簡は全3章で成り立っている短い文書です。その内容は、冒頭の挨拶と励まし(1章)、終末に至る予定の提示、反キリストへの言及(2章)、怠惰な生活への戒めと実践的教え、結語(3章)、といったものです。


以下、章句を解説いたします。


「すなわち、あなたがたを悩ます者には患難をもって報い、悩まされているあなたがたには、わたしたちと共に、休息をもって報いて下さる」(1.6)


パウロは、上記のように、迫害と患難とのただ中で忍耐と信仰を持って歩んでいるテサロニケの信徒を励ましました。そうしてキリストの来臨への希望を伝えました。


「その日に、イエスは下ってこられ、聖徒たちの中であがめられ、すべて信じる者たちの間で驚嘆されるであろう」(1.10)


しかし当時、終末や再臨について誤った教えがはびこり、「終末が訪れている」と信じて浮き足立つテサロニケの信徒たちに対して、キリストの「再臨への正しい教え(順序)」を示しました。


「主の日はすでにきたとふれまわる者があっても、すぐさま心を動かされたり、あわてたりしてはいけない。まず背教のことが起り、不法の者、すなわち、滅びの子が現れるにちがい」(2.2~3)


伝統的なキリス教では、「主の日」(終りの日)とは、キリストの再臨の日であり、「主の日」の始まりが、患難時代であるとされています。先ず背教が起こり、次に不法の者が現れ、そこから患難時代が始まり、その後(7年後)キリストの再臨が起こり、キリストは地上に千年王国を建てると信じられています。


そして、「主の日」、即ち「裁きの日・再臨の日」の前には、反キリストと呼ばれる偶像崇拝者がくるので、気をつけるよう警告しました。


「彼は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して立ち上がり、自ら神の宮に座して、自分は神だと宣言する」(2.4)


そうして最後に、パウロ自らも労苦し努力して働いたとした上、怠惰な生活を送り、働かない人々に対しては、働いて自分で得たパンを食べるように勧めています。


「また、あなたがたの所にいた時に、『働こうとしない者は、食べることもしてはならない』と命じておいた」(3.10)


以上、テサロニケ人への第二の手紙を解説しました。次回は「テモテへの第一の手紙」を解説いたします。(了)