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新約聖書の解説③ ルカによる福音書

🔷聖書の知識130ー新約聖書の解説③ールカによる福音書


そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる(ルカ24.47)


「ルカによる福音書」(以下、「ルカ書」と呼ぶ)は「マルコによる福音書」を下敷きにし,イエスの生誕、少年期,宣教、十字架、復活の記録を順を追って書かれています。


【著者・成立・読者】


ルカ書は使徒パウロの協力者で医師「ルカ」による書とされ、「使徒行伝」と同一作者によるとされており、ルカは異邦人であったとするのが通説です。


次の聖句の通りルカについての記載があります。


「愛する医者ルカとデマスとが、あなたがたによろしく」(コロサイ4.14)


「ただルカだけが、わたしのもとにいる。マルコを連れて、一緒にきなさい」(2テモテ4.11)


「わたしの同労者たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからも、よろしく」(1.24)


マルコ書は70年ころ,マタイ書とルカ書がエルサレム神殿の崩壊後の80‐~90年,ヨハネ書が95年~100年ころの成立と考えられています。


ルカ書は、マルコ書及び「伝承資料」(Q資料)をもとに書かれたとみなされ、イエスの生涯と教えを詳述し、キリスト教の真理性を史実に基づいて証明しようとしたものです。そのギリシア語は美しく、文学的にもすぐれた叙述と言われています。従って、ルカ書の著者ルカは、新約諸文書の著者の中でも、当時のヘレニズム世界できちんとした教育を受けた者であると思われます。


著者は生前のイエスと直接会ったとは言っていませんが、すべてを丁寧に調べあげ、事実を順序だてて書き記したということを冒頭で述べています(1.3)。なお、旧約聖書からの引用は28箇所になります。


しかしこのルカ書を含む聖書には、イエスの詳細な生涯の記録が少なく、特にイエスが宣教を始められる以前の「私生涯」についてはほとんど書かれていません。


これは、イエスが自分では何も書き残さず(これは釈迦、孔子、ソクラテスも同じ)、従って福音書には、イエスの容貌や性格や趣味や教育や経歴は何も書かれず、また家系や誕生や幼児やさらにはイエスの公生涯の具体的経過についてさえ、確かなことはほとんど何もわかりません。(八木誠一著『イエス』清水書P7)


つまり福音書に記載があるのは、史的イエスではなく、イエスの語った教え(愛・信仰・倫理・教訓)、行った業(癒し・奇跡)、十字架と復活の意味(贖罪・永遠の命)、聖書記者のケリュグマ(宣教目的の信仰告白)であり、キリストとの実存的な出会いであります。即ち、イエスを救い主と信じた原始教団の人々の「信仰的文書」であるというのです。


なお、イエスの実像について、最もよく書かれているのは、筆者の知る限り、文鮮明先生のみ言集『イエス様の生涯と愛』(光言社)であると思われます。


また、対象とする読者は、相応の地位にあったテオピロ閣下宛と書いていますが(1.3)、実際著者が想定するのは、異邦人たる「ギリシャ人」と考えられています。ルカは、理想的な人間イエス「人の子」を描写し、異邦人社会に対してキリスト教を弁証しました。


ちなみに「人の子」には二つの意味があるとキリスト教では言っています。第一の意味はメシアの称号てあり(ダニエル書7.13~14)、二番目の意味は、イエスが本当に、人間であったと言うことです。イエスは100%完全に神であり(ヨハネ1.1)またイエスは100%完全に人間でもありました(ヨハネ1.14)。


マタイは、読者対象をユダヤ人とし、キリストを「ユダヤ人の王」として描き、ローマ人を対象とし、キリストを「しもべ」として描きました。そして、ルカは、読者対象をギリシャ人とし、キリストを「人の子」として招き、ヨハネは、キリストを「神の子」として描き、読者対象は全世界だと言われています。


【内容と特徴】


ルカ書の全体構成は、次のようなります。


①誕生から宣教出発までの私生涯(1.1~2.52)

②ガリラヤ地方での宣教(公生涯、3.1~9.51)

③エルサレムへ向かう(9.51~19.27)

④エルサレムでの最後の時間(19.28~24.55)


<内容>

ルカの書には、20の奇跡物語と23のたとえ話があり、ヨハネとイエスの誕生物語が詳しく語られています。イエスが荒野でサタンの試みを受けたことは共観福音書3書にありますが、エジプトへの避難については、マタイ書以外には記載はありません。


他の福音書になく、ルカの福音書にしか書かれていないものには、次のようなものがあります。


バプテスマのヨハネの出生に関わる話(1.5~25)、ベツレヘムでの誕生物語(2.1~20)、イエスが12歳のときの神殿での話(2.41~52)、良いサマリヤ人の話(10.30~37),放蕩息子の話(15.11~32)、金持ちとラザロの話(16.19~31)、重い皮膚病にかかった10人の話(17.11~19)、復活された主が弟子たちとともにエマオまでの道を歩かれたときの記述(24.13~35)。


その他に、ルカ書の特徴には,他の福音書にはない「バプテスマのヨハネの教え」が含まれていること(3.10~14)、イエス・キリストの祈りの精神を強調していること(3.21、5.16、9.18、9.28)、七十人の召し・訓練・伝道の働きが含まれていること(10.1~20)、などがあります。さらにルカは、救い主がゲツセマネで血を流され,天使が救い主を力づけたこと(22.43)を記録した唯一の福音書です。



ルカ書にしか記載がない箇所で特筆すべきは、マリアが天使ガブリエルから聖霊による身籠りの託宣を受けてから、即座に親戚のザカリアの家に行って3ヶ月を過ごすくだりです。


「そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした」(1.39~40)


またルカの福音書は、神殿で始まり(1.9)、神殿で終わる(24.53)ことから,神が人類と交わりを持たれる主要な場所としての「神殿の重要性」を示しています。


<特徴>

ルカ書の特徴として、普遍主義(世界主義)があり、イエスは「異邦人を照す光」として描かれます。ルカは、ユダヤ人社会の底辺にいる人たちへの愛と共に、サマリヤ人たちや異邦人への愛も語りました。(10.25~37)


また下記の通り、重要な局面でのイエスの「祈り」を強調しています。


「さて、民衆がみなバプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開け」(3.21)


「しかしイエスは、寂しい所に退いて祈っておられた」(5.16)


「このころ、イエスは祈るために山へ行き、夜を徹して神に祈られた」(6.12)


「祈るときには、こう言いなさい、『父よ、御名があがめられますように。御国がきますように。わたしたちの日ごとの食物を、日々お与えください。わたしたちに負債のある者を皆ゆるしますから、わたしたちの罪をもおゆるしください。わたしたちを試みに会わせないでください』」(11.2~5)


「しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った」(22.32)


「イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた」(22.44)


また中川健一牧師は、ルカはパウロの伝道旅行に参加し、悔い改め、赦し、憐れみなどについてパウロの教えの影響を受けたと指摘されています。それは特に、悔い改めによる「赦し」を強調している以下の聖句に表れているというのです。


「彼はヨルダンのほとりの全地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えた」(3.3)


「イエスは彼らの信仰を見て、『人よ、あなたの罪はゆるされた』と言われた」(5.20)


「ゆるしてやれ。そうすれば、自分もゆるされるであろう」(6.37)


「それであなたに言うが、この女は多く愛したから、その多くの罪はゆるされているのである」(7.47)


「もしあなたに対して一日に七度罪を犯し、そして七度『悔い改めます』と言ってあなたのところへ帰ってくれば、ゆるしてやるがよい」(17.4)


「そのとき、イエスは言われた、「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです」(23.34)


「そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる」(24.47)


以上、ルカによる福音書を概観いたしました。次回は「ヨハネによる福音書」の解説になります。(了)


ゲッセマネ (カール・ハインリッヒ・ブロッホ画)



上記絵画*マリアとエリサベツの出会い (カール・ブロッホ画)