◇聖書の知識20ーアメリカ大統領の信仰と政治
しかし、あなたがたは、選ばれた種族、祭司の国、聖なる国民、神につける民である。(1ぺテロ2・9)
この2月3日、地元青葉台選出の衆議院議員の事務所を訪問しました。秘書と2時間ほど話して、政策のこと、選挙のこと、後援会入会手続きなど色々意見を交換ました。
筆者は話の終わりに、自分が聖書を研究していること、福音派の牧師をしていることを明らかにした上、政策の根源に宗教的背景が必要であり、特にアメリカ政治の本質を理解するためには、大統領のキリスト教信仰を理解することが必須であり、代議士が大成するためにも重要であることを述べた次第です。

何故なら、アメリカの歴代大統領は、政治家であると同時に敬虔なクリスチャンでもあり、その政治政策はキリスト教の世界観、歴史観に深く根差しているからです。また、仮に本人の信仰の程度はともかくとしても、有権者の8割がキリスト教徒であり、国民のキリスト教信仰の影響を色濃く受るからであります。そこで今回は、このアメリカ大統領の信仰と政策について見ていきたいと思います。
1、前にも述べましたが、「アメリカは神の特別の使命のもとにある」「神に源を持つ個人の尊厳、自由、人権といった普遍的価値を世界に拡散していくことがアメリカの使命である」とのアメリカ的選民観は、歴代大統領に共通する信条であります。これがマニフェスト・ディスティニー(明白なる使命)と言われているものです。
こういったある種の選民観は、明らかに聖書とキリスト教信仰に根差したものであり、歴代大統領の信仰は、大別して市民宗教型(アメリカ教型)信仰とボーン・アゲイン型(回心型)信仰の2つに分けられると思われます。
ワシントン、アイゼンワー、レーガンはアメリカの普遍的なキリスト教的信条を価値視する市民宗教型として挙げられ、またカーター、クリントン、ブッシュは信仰深いボーンアゲイン型として数えられ、リンカーンはその両方であると考えられます。これらのことは、聖書の知識8~12にも書いていますので、ご参照下さい。
2、偉大なアメリカ大統領は、多くが祈りの人であり、在職中の日曜礼拝はほとんど欠かしたことがありません。また、演説には必ず聖書を引用しました。
ワシントンは独立戦争の最中、アメリカに寄せられる神の大いなる摂理を体感し、一人で神に祈ることが日課でした。1789年の大統領就任演説で 「アメリカ人ほど神の見えざる摂理の導きを尊ぶ国民はいない」と述べています。ワシントンは、このアメリカ教とも言うべき市民宗教を体現した最初の大統領で、アメリカのモーセと讃えられました。
またリンカーンは聖書に精通し、まるで牧師が聖書を解くように国民に語りかけ、独立宣言、合衆国憲法、そして聖書を尊び、「アメリカの預言者」「市民宗教の神学者」と呼ばれました。奴隷制度は、神の啓示に照らしても、自然神学に照らしても誤りであり、全能者の怒りを招くと主張しました。凶弾に倒れたリンカーンは神話的人物となり、キリストのように自身の血でアメリカを清めて、国民に和解をもたらした「贖罪の羊」と崇められていきました。リンカーンの信仰については諸説ありますが、神学者のニーバーは、「20世紀の如何なる政治家よりも真摯な信仰の持ち主だった」と証言しています。
更にアイゼンハワーは、両親が篤実なクリスチャンで、1953年に長老派教会で正式に洗礼を受け、大統領就任後は欠かさず礼拝に参加しました。「宗教への信仰無しに戦争は戦えなかった」と述懐し、「私ほど宗教的な人間はいない」と公言して、聖書の言葉や神学の述語を随所に散りばめて演説しました。宗教学者のロバート・ベラーが唱えた「市民宗教」(アメリカ教)の文字通り忠実な推進者になりました。
市民宗教とは、「神のもとにある国」、「世界に特別な使命を持つ祭司の国」、そして「敬虔な聖書的霊性」といった信仰が融合した、教会の垣根を超えた聖書的愛国信条であります。国民がこの信条を基礎にして国を盛り立てていくのがアメリカ精神であるというのです。日本で言えば、「日本的霊性」と呼ばれる概念です。
3、一方、カーターは福音派の牧師の経歴を持つボーンアゲインした大統領であり、初仕事がホワイトハウスの執務室に祈祷室を作ることでした。多忙な選挙期間中でも、就寝前には必ず聖書1章を読む日課を欠かさ無かったと言われています。
クリントンは、生まれる前に実父が亡くなり、義父はアル中で家庭的に恵まれず、少年時代の唯一の慰め場としたのがバプティスト教会でした。彼はここで安らぎを見出し救いの回心体験をしています。また、ブッシュ(ジュニア)は事業の失敗とアル中で苦しみましたが、40歳代で回心を体験し神を確信して立ち直ったと言われています。
このように、歴代の大統領は、市民宗教の体現者として、あるいは個人的にボーンアゲインを体験した信仰者として、まさに篤実なキリスト者というアイデンティティーの持ち主であるのです。
4、トランプ政権もまた福音政権であります。副大統領のペンスは敬虔なクリスチャンであり、昨年10月4日ハドソン研究所にて「中共による無神論的世界秩序の形成を絶対に許さない」という聖書的世界観に基づく演説を行いました。アメリカは、「神なき」勢力に対抗して自由を守る戦いをする義務があるとの決意です。
今、中国で新型コロナウイルスが猛威を振るい、1000万都市武漢が閉鎖され未曾有の混乱に陥っています。これは正に、中国共産主義に対する神の怒り以外の何ものでもありません。また、このように捉えるのが聖書的解釈であります。かのチェルノブイリ原発事故がソ連崩壊の要因になったように、このウィルスは中共崩壊の合図になるかもしれません。
また、トランプ自身もプロテスタント長老派のクリスチャンで、「アメリカは祈りによって支えられている国」と述べ、「神無き民主主義には如何なる生産性もない」と断言し、聖書に基づいてイスラエル擁護を明確にしています。トランプの「Make America Great Again」というスローガンの真の意味は、アメリカをもう一度「神に選ばれた特別な国」、「自由と民主主義の宣教師」に復活しようという意気込みでありましょう。
そうしてトランプ政権の閣僚会議は、国務長官の祈祷から始まるというのです。まさにトランプ政権の政策は、キリスト教福音信仰の理解無しに理解することはできません。しかし一方では、選挙目当てのパフォーマンスだといった冷ややかな見方があることも付け加えておきます。
5、翻って日本の政治家はどうでしょうか。日本の政治家の演説から、先ず「神」という単語を聞くことはありません。まして聖句の引用などは論外です。せめて仏典からの引用でもと期待しますが、遂ぞ聞いたことはありません。ならば閣僚会議の前に祝詞(のりと)でもと思うのですが・・・。
しかし、大平正芳は敬虔なクリスチャンでしたし、麻生太郎のカトリック洗礼名はフランシスコであり、石破茂の家系は歴代クリスチャンで本人もプロテスタントの洗礼を受けています。また、石橋湛山は僧籍を持ったまま首相を務め、綿貫民輔は神主でありながら衆議院議長を務めました。
美智子上皇后はカトリックの聖心女子大学で学び、雅子皇后もカトリックの雙葉学園で学ばれ、両者キリスト教の影響を強く受けておられます。また、安部昭恵夫人は聖心女子大学出身のクリスチャンだと言われています。
こうして見ると日本も捨てたものではありません。1ぺテロ2章9節に、「祭司の国、聖なる国民、神につける民」とある通り、日本もアメリカと同様、名実共に神の摂理を担う国になりたいものです。
6、よい政治にはよい宗教が欠かせません。そしてこれからの日本の政治家は、最大の同盟国であるアメリカ大統領とその政権のキリスト教信仰を理解するべきであります。この理解なくしてアメリカの世界政策を真に理解することなど出来ないからです。その意味で、冒頭の代議士に、機会を見てこのことを伝えたいと思っているところです。
歴代アメリカ大統領は、いわゆる「メンター」と呼ばれる牧師などによる「霊的アドバイザー」をホワイトハウスの顧問にしてきました。ビリーグラハムは戦後の歴代大統領の霊的顧問であり、韓鶴子総裁主宰の世界聖職者協議会(WCLC)設立集会で祝辞を述べたポーラ・ホワイト牧師は、現在トランプ大統領の重要なメンターであります。ホワイト牧師はその席で「私達が団結すれば、国も動かすことが出来る」と語りました。
メンターとまではいかなくても、せめて代議士にレクチャーできる機会がくることを神に祈っているところです。最後までお付き合い下さりありがとうございました。(了)