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自民党総裁選挙に思う 高市早苗の思想と政策

◯徒然日誌(令和6年9月11日)  自民党総裁選挙に思うー高市早苗の思想と政策 

 

    主よ、わたしを平和の器とならせてください。

  憎しみがあるところに愛を、

  争いがあるところに赦しを、

  分裂があるところに一致を、

  疑いのあるところに信仰を、

  誤りがあるところに真理を、

  絶望があるところに希望を、

  闇あるところに光を、

  悲しみあるところに喜びを。

                      (フランシスコの平和の祈り)

 

はじめに 

 

今や政局は自民党総裁選挙一色であり、世論崇拝の衆愚政治が日本を覆っている。9月6日に小泉進次郎氏の総裁選挙出馬の記者会見があったが、まさに日本の民主主義の劣化を象徴している。京都大学教授の藤井聡氏は、実績も経験もなく、深い知識も洞察もない小泉氏が、果たして、トランプやプーチンや習金平など、世界の名だたる首脳と渡り合えるのか、「あまりにもお粗末である」と述べられ、そして小泉氏の政策にはポピュリズムが先行し、哲学や宗教的理念の裏付けがないと指摘された。また高須クリニックの高須幹弥医師も、小泉氏は人気だけが先行して中身は何もないと苦言を呈された。 

 

『アメリカの民主主義』という近代民主主義思想の古典を遺したトクビィルは、「民主主義を長く続けると世論崇拝、多数派至上主義が横行し、それに伴い、政治家の質が低下し、世論に忖度するろくな政治家しか出てこなくなる」と述べたが、まさに現代日本の政治の現状を見事に言い当てており、この度の自民党総裁選挙はその象徴である。 

 

その日本の政治の劣化の中にあって、かろうじて政治哲学と理念らしきものを有しているのが、高市早苗氏と青山繁晴氏である。そこで、故安倍晋三元首相(以下、親しみを込めて「安倍さん」と呼ぶ)が最も信頼し、安倍さんから強く支持された高市早苗氏について、しばし論じることにする。 

 

【高市早苗の思想と政策】 


3年前の2021年9月、当時の菅義偉(すがよしひで)首相が総裁選への不出馬を表明したことを受け、高市氏は初めて首相の座にチャレンジしたが、この時、高市氏を全面的に支援したのが安倍さんであった。高市氏の周辺は「安倍さんと同じ考えを持っていて、それを共有する中で意気投合した」と語った。一方、2011年の総裁選で高市氏は、当時所属していた町村派を退会してまでして安倍さんを応援した。そして、第二次安倍政権発足後は政調会長や総務大臣などを歴任し安倍政権を支えたのである。 

 

高市氏は、安倍さんと政治理念、国家観、歴史観を共有する政治家であり、もし安倍さんが生きておられたら、今回も高市氏を支持されることは明らかであり、参議院議員の西田昌司氏も言われている通り、高市氏は安倍さんの正当な後継者である。そして日本初の女性首相という新鮮さ、政治家としての十分な経験、信念に基づく政策は他候補にはない魅力である。高市氏の思想と政策については、3年前の自民党総裁選挙出馬に際して、「つれづれ日誌(令和3年9月22日)-高市早苗著『美しく、強く、成長する国へ』を読んで」で述べたが、3年後の今、再度の出馬に際して、もう一度振り返っておきたいと思う。 

 

<高市早苗の政策ー総裁選挙出馬記者会見> 

 

では高市早苗氏は如何なる政策を掲げているのか、高市氏はホームページに、次の通りの政策を掲載している。 

 

①大切なものを守り抜ける国を創ること→国民の生命と財産、国土と資源、国家の主権と名誉を守る

②憲法改正・正しい歴史観と男系天皇の維持→第9条の改正、緊急事態条項、自虐史観から

の脱却、女系天皇・選択的夫婦別姓・同性婚に反対

③日本経済強靭化計画→ニューアベノミクス(通称サナエノミクス)。三本の矢の拡充(金融

緩和・機動的な財政出動・大胆な危機管理投資と成長投資)、インフレ率2%の達成、雇用

と所得の安定

④機会の平等を保証する制度→悪平等主義を糺す 

⑤「自立と勤勉の倫理」が重視される公正な社会の実現

⑥国家の基本である「教育」の重視→道徳心、自主自律の精神、勤労を重んずる精神、伝統

と文化を尊重する国と郷土愛の醸成。 

 

そして9月9日午後2時より、高市氏は、満を持して国会内で総裁選挙出馬の記者会見を行い、所信を表明した。力強く気迫のある所信表明であり、高市氏の並々ならない決意が伝わってきた。また政策もしっかりしてきめ細かく、さすがに自民党きっての政策通だと再認識した。 

 

高市氏は冒頭、国の究極の使命は、「国民の生命と財産を守り抜くこと」「領土・領海・領空・資源を守り抜くこと」「国家の主権と名誉を守り抜くこと」であると基本精神を述べ、そのためには、「防衛力・外交力・経済力・情報力・技術力・人材力」が必要であると強調した(高市早苗編著『国力の研究』産経新聞出版)。そして「日本列島を、強く豊かに」のスローガンを掲げて、日本をもう一度、「世界のてっぺんに押し上げる」と語り、重点政策6項目をあげ、明瞭にこれを説明した。上記のホームページ記載項目と重複箇所もあるが、以下、その骨子を簡潔に書き記す。 

 

①大胆な「危機管理投資」と「成長投資」で、安心・安全の確保と「強い経済」を実現す

る。→a.食料安全保障の確立、b.エネルギー・資源安全保障の強化、c.現在と未来の生命

を守る「令和の国土強靭化計画」、d.サイバーセキュリティ対策の強化、e.健康医療安全

保障の構築、f.成長投資の強化。 

 

②防衛力・外交力・情報力の強化で日本を守る。→新たな戦争の態様にも対応できる国防体

制を構築する。「自由で開かれたインド・太平洋」を構築すると共に、アメリカをイン

ド・太平洋へ関与させる外交を展開する。 

 

③全世代の安心感創出と公正な制度により日本の活力を引き出す。 

 

④今を生きる日本人と次世代への責任を果たす。→日本人の手による日本国憲法の制定、男

系皇統を守る皇室典範の改正を目指す。また他候補(河野・小泉・茂木など)が政策項目に

掲げている「選択的夫婦別姓」導入に反対し、同性婚にも反対する。 

 

⑤新時代を築く「令和の省庁再編」に挑戦する。→内閣直轄の「内閣情報局」(中央情報機

関)と最高意思決定機関として「内閣情報会議」を設置するなど。 

 

⑥自民党改革を断行する。 

 

以上が政策の骨子である。やや盛り沢山というキライはあるものの、「日本列島を、強く豊かに」という高市氏のほとばしる情熱が感じられ、筆者は大いに共感した。最後に高市氏が、映画「あの花の咲く丘で君とまた出会えたら」の話で締めくくったが、この話しは涙を誘った。明日は出撃する特攻隊の青年に恋をした女子高校生の切ない物語である。彼女は恋人が国のために死んだことを知り、多くの人の犠牲の上に平和が成り立っていることを悟る。 

 

こうして高市氏のスピーチは、先ず基本理念と目標を示し、次にこれを政策レベルに落とし込み、最後に情に訴えるという見事なものだった。まさに知情意のバランスがとれたスピーチで、筆者にとっても大いに参考になった。 

 

<何故、高市氏を押すのかーその思想・政治哲学> 

 

高市氏は、著書『美しく、強く、成長する国へ』の冒頭でも、「国の究極の使命は、国民の生命と財産を守り抜くこと、領土・領海・領空・資源を守り抜くこと、国家の主権と名誉を守り抜くこと、だと考えている」(P28) と述べている。ここに高市氏の政治理念、国家観、究極的な政治目標が端的に示されている。そして高市氏は、「日本経済の強靭化」を重点政策に掲げたが、具体的な政策の根本に理念と政治哲学が必要だと考えている数少ない政治家である。 

 

さて筆者は自民党党員であり(地元国会議員から頼まれた)、今回の総裁選挙で地方票の一票を有するものだが、タイミングよく高市事務所から「基本的政策」のパンフレットが郵送されてきた。では筆者は、今回何故高市早苗氏に一票を投じるのだろうか。その理由は、①はっきりした政治理念と国家観・歴史観を持っていること、②政策の妥当性(経済強靭化政策、危機管理、外交安全保障政策、憲法改正、男系天皇制の死守)、③人間的な明るさや人柄のよさ、及び女性初の首相誕生・和製サッチャーへの期待感、の3点である。 

 

しかし、実は筆者が高市氏を支持する最大の理由は、安倍さんが強く押していること、そしてUCを闇雲に否定していないこと、この2点である。高市氏は、テレビに出演し、「旧統一教会を頭から反社会的団体と決めつけるのは如何なものか」と疑問を呈した。ちなみに小泉進次郎氏は、9月6日の総裁選立候補の記者会見で、鈴木エイトから旧統一教会との関係を質問され(これは明らかにやらせ質問である)、「自分は無関係だが、今後自民党は旧統一教会と断つことを徹底する」と述べている。 

 

高市氏は、神戸大学経営学部・松下政経塾卒、衆議院当選8回、自民党政調会長、総務大臣、経済安全保障大臣を歴任し、燦然たる経歴を有する反面、女性としての悲哀も体験した。彼女は、婦人科の治療を受けてから子供を産めない体になり、子供を切望したにも係わらず、子を産めなかった悲しみをネットで吐露している。少子化対策の政策を行っている時、「子供を産んでから言って欲しい」などと心ないことを言われ、辛い心情を通過した。 

 

<サッチャーを尊敬する高市早苗> 

 

実は高市氏は、イギリスのマーガレット・サッチャー(1925年~2013年)を自らの政治の師匠として最も尊敬している。 


サッチャーは、イギリス病と言われて、長らく低迷していた英国経済を、市場原理の導入で回復させ、「福祉国家」から「自立国家」へと転換させた。歴史的にイギリスは、黄金時代を築いたエリザベス1世(在位1558年~1603年)やビクトリア女王(在位1837年~ 1901年)に象徴されるように、奇しくも女王が立った時に繁栄期を迎えている。そしてサッチャー首相(在任1979年~1990年)の誕生でイギリス経済は甦った。 イギリスと日本は、同じ島国の海洋国家であること、共に立憲君主制をとって皇室(王室)を大事にしていること、薩長倒幕派を支援したこと、日露戦争での日英同盟など、運命的な類似性と相性の良さを有している。 

 

ちなみにサッチャーの生家は代々メソジストの熱心な信徒であり、サッチャーは敬虔なクリスチャンであった。彼女の政治政策は、もっぱらキリスト教信仰に源泉があると言われている。 サッチャーは『回想録』の中で、「私は、熱烈に宗教的な家庭に生まれました。家庭はメソジズム(ジョン・ウェスレーによって興されたキリスト教信仰覚醒運動)を中心に回っていたのです。日曜日は、ウェスレー派メソジスト教会の礼拝に欠かさず出席し、信仰に明け、信仰に暮れる一日を過ごしました」と語っている。そして生家の家訓であった「質素倹約」「自己責任」「自助努力」の精神はサッチャーに色濃く受け継がれた。 

 

元在英日本大使館公使の冨田浩司氏は、著書『マーガレット・サッチャー 政治を変えた「鉄の女」』(新潮選書)の中で、「サッチャーの政治信条の根底にはキリスト教信仰があった」と指摘している。また冨田氏は同書の中で、「宗教とのかかわりから、サッチャー政治の中では道徳や信念が大きな要素を占めるに至った。重要と思えるのは、サッチャーが当時のイギリスが直面していた危機を政策論で片付けられない『道徳的危機』と位置づけていたことである」 と述べ、「彼女にとって信仰は単に自らの内面の問題だけではなく、彼女が打ち出した国家改革策の倫理的な枠組みをなすものであった」(同書P22)とも指摘している。 

 

マクミラン、ヒース、プレア首相ら歴代イギリス首相は、多くが信仰を拠り所にした敬虔なキリスト信者だったが、とりわけサッチャーは、ひときわ強い信仰を持ち、「イギリスの戦後政治指導者で、彼女ほど公の場で政治と宗教の関係について語った政治家はいない」と言われ、「サッチャーの政治信念の深さと強靭さを、宗教的な確信を抜きに説明できない」とした(同書P23) 。サッチャーは「経済学は方法に過ぎません。目的は魂を変えることなのです」(同書P35) と明言し、「私は、支持する政治経済体制とキリスト教の教義の間には、深く『神の摂理に基づく調和』が存在するという確信を失ったことはない」(『回想録』)と語り、サッチャリズムがキリスト教の真理を反映したものであるという確信を持っていた。 

 

1979年、労働党政権のキャラハンに代わって女性初のイギリス首相に就任し、そしてダウニング街10番地(首相官邸)に入居した際、先ず最初サッチャーは「フランシスコの平和の祈り」を引用して全国民に発信した。 

 

   主よ、わたしを平和の器とならせてください。

  憎しみがあるところに愛を、

  争いがあるところに赦しを、

  分裂があるところに一致を、

  疑いのあるところに信仰を、

  誤りがあるところに真理を、

  絶望があるところに希望を、

  闇あるところに光を、

  悲しみあるところに喜びを。

                      (フランシスコの平和の祈り)

 

高市早苗氏は、このようなサッチャーを研究し、その自叙伝を読み、熱心に学んだ。当然サッチャーのキリスト教精神からも多くを学んでいるはずであり、上記の政策「自立と勤勉の倫理」にも反映されていると思われる。 ただ、高市氏の国家観・歴史観の淵源は日本の多神教的な宗教的伝統思想、いわゆる「日本教」であると思われ、高市氏にサッチャーの神、「唯一の神の観念」が入れば鬼に金棒になる。 このような高市氏の女性首相誕生は、日本に思わぬ運勢をもたらし、何かが大きく変わるのではないかとの予感がする。 

 

<総裁選挙の行方> 

 

さて自民党総裁選(9月12日に告示、27日に投開票)は、自民党に所属する国会議員367票と、党員・党友票367票(党員約110万人)の合計734票で競われる。過半数を得た候補者が当選するが、第一回目で誰も過半数にいかない場合は、一位、二位が決戦投票を行い、議員票367票、地方代表票47票の計414票の過半数を獲得した候補が当選となる。 

 

現時点では、小泉進次郎、石破茂、高市早苗の三者優勢とされているが、何が起こるか分からない。青山繁晴氏が高市氏を支援し、保守共同を図るという話しも取り沙汰されている。高市氏の推薦人である西田昌司議員によると、第一回目で高市氏が二位以内に入り、一位の小泉氏(石破氏)との決戦投票で勝利したいという戦略を描いている。小泉氏の政策的な無為無能ぶりが明らかになり、重鎮の麻生太郎氏が高市氏にテコ入れすれば高市氏に勝ち目が出てくる。仮にポピュリズム的な小泉進次郎氏や石破茂氏が総理・総裁に選ばれるようなことがあれば、日本の民主主義は更に劣化し、政治的、経済的、摂理的に致命的な打撃を受けることになる。 

 

問題は菅義偉氏の動向である。菅氏は軽い小泉氏を担ぎ、菅傀儡政権を目論んでいるという噂があるが、菅氏は、安倍さんが高市氏を支持していたことは百も承知であり、人間として矜持を示して欲しいと切望する。 

 

【菅義偉氏にもの申す 】 

 

菅義偉前首相(75)は8日、自民党総裁選に出馬を表明した小泉進次郎氏の横浜市中区での街頭演説に駆けつけ、「小泉氏に日本の舵取りを任せたい」と支援を呼びかけた。 

 

かって菅氏は、「趣味は安倍晋三」と言って憚らず、「リーダーとしての器の大きさ、意外なほどの柔軟性や包容力、そして懐の深さには改めて驚かされるばかりです」と語っていた。安倍さんは、5年に渡る政策研鑽(特に経済政策)の雌伏期間を経て、2012年9月の自民党総裁選に出馬して総裁に返り咲くことになるが、この時、出馬慎重論が大勢の中、総裁選出馬を最後に決断したのは「是非出るべきだ」という菅氏の一押しだったという。苦労人の菅氏は安倍元首相の国葬の追悼文で次のように述懐した。 

 

菅氏は、まだ駆け出しの政治家時代に、北朝鮮問題で始めて安倍さんと話した時、「この人こそは、いつか総理になる人、ならねばならない人なのだ」と直感し、この確信において、一度として揺らがなかったと述懐した。 安倍さんが、持病で総理の座を退いて、5年の雌伏の後、二度目の自民党総裁選出馬を決断する時、菅氏は3時間をかけて説得したという。「ようやく、首をタテに振ってくれた。私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも、誇らしく思い出すであろう」と述べいる。 

 

そうして、2012年12月16日の衆議院選挙で自民党が大勝し、12月26日、第96代の首相に就任し第二次安倍内閣が誕生した。以後、第四次内閣の2020年9月16日まで、7年9ヵ月の長期政権がつづいたが、その間、一貫して官房長官として用いられ、安倍政権を支えた。つまり、安倍さんと菅氏はまさに一心同体だったのである。 

 

その安倍さんが日本の総理としてふさわしいと強く押したのは高市さんだったこと、そして安倍さんが生きておられれば、再度高市氏を支援するのは明らかである。これを最もよく知る立場にある菅氏が、何故高市氏を支援せず、何故今回小泉氏支持に回ったのか。安倍さんが遺言として遺した高市さんを、菅氏が安倍さんに代わって保護するべきではないのか、これは政治を越えた人間としての道理であると筆者は思料する。菅氏は前回の総裁選挙で、あの河野太郎氏を支援するという致命的なミスをしたが、今回も同じ轍を踏むというのだろうか。 

 

筆者はこのような思いと怒りの中で、深く呻吟した。老練な菅氏一流の深謀遠慮かもしれないが、結果的に高市潰しに回った菅氏に、もし人間としての矜持があるならば、願わくば上記筆者の言葉を想起して欲しい。 

 

以上、今回の自民党総裁選挙について、安倍さんならどう行動するかという視点から考察し、特に高市早苗氏の思想と政策を吟味した。果たして総裁選挙は如何なる結果をもたらすか、まさに神のみぞ知るということかも知れない。和製サッチャーよ、出でよ! (了)    牧師・宣教師  吉田宏

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