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新約聖書の解説⑮ テモテへの第一の手紙

🔷聖書の知識142ー新約聖書の解説⑮ーテモテへの第一の手紙


神は唯一であり、神と人との間の仲保者もただひとりであって、それは人なるキリスト・イエスである。(1テモテ2.5)


『テモテへの第一の手紙』は、「テモテへの第二の手紙」と「テトスへの手紙」を総称して、「牧会書簡」と言われています。


ちなみに「牧会」(Pastoral Care)とは、牧師や司祭が行うミニストリー(神からの賜物を用いて、神と人、地域や社会に仕えていくこと)や人間の魂への配慮、助言であり、カトリック教会では「司牧」と呼んでいます。


本書簡は伝統的に使徒パウロの手により、66年ころマケドニアで書かれたものと言われていますが、高等批評の立場では「擬似パウロ書簡」と呼び真筆性が否定されています。


いずれにせよ、パウロの信仰や伝統を引き継ぐ形で、教会の指導のために書かれた書簡であると思われます。


【内容】


本書簡の執筆目的は、①大都市の教会を牧する若い伝道者テモテを励ますこと、②偽教師の教えに対抗する方法を教えること、③教会内の種々の問題に対する対応策を指示すること、でした。


手紙の冒頭で差出人はパウロ、宛名はテモテとなっています。テモテはパウロが最も信頼する弟子の一人で、パウロの伝道旅行にしばしば同伴しています(使徒20.4)。


本書はエペソにいるテモテに対して、 異なる教え(作り話や系図)についての警告や若い指導者への助言(1章、2章)、共同体の責任者となる「監督」や「執事」の在り方などについての訓示(3章)、 また、結婚を禁じたり、食物を断つことを命じたりする偽教師(異端・グノーシス主義?)への警告がなされ(4章)、人間関係の在り方を説き、誤りのない正しい信仰を保つことへの励まし(5章~6章)が記されています。


【注目聖句】


「作り話やはてしのない系図などに気をとられることもないように、命じなさい。そのようなことは信仰による神の務を果すものではなく、むしろ論議を引き起させるだけのものである」(1.4)


当時、教会に偽教師がやって来て、「違った教え」を説くようになり、彼らは、「果てしない作り話」や「系図」に関心を向けさせているというのです。


「果てしない作り話」とは、グノーシス主義的な教えだったと思われ、「系図」は、ユダヤ人たちが自分はどの部族出身か、また祭司、レビ人になる資格があるかどうか、などを論じる際に使ったものであります。


パウロは、そのようなものは議論を巻き起こすだけで、霊的にはなんの価値もない、無益な議論に巻き込まれると、最も重要なこと、即ち、キリストや信仰の最終目的である「愛」が見えなくなると警告しました。


「神は唯一であり、神と人との間の仲保者もただひとりであって、それは人なるキリスト・イエスである。彼は、すべての人のあがないとしてご自身をささげられた」(1テモテ2.5~ 6)


この聖句ほど、聖書の本質的な主張、キリスト教の真髄が表れているフレーズはありません。神が唯一であることを宣して多神教を退け、その唯一の神との完全な仲保者はキリストたるイエスのみであり、他の如何なる宗教教祖と言えども代替できないことが宣言されています。


そして、キリストが贖罪の羊として、人類の罪を贖うために死なれたことが言い表されています。


「さて、監督は、非難のない人で、ひとりの妻の夫であり、自らを制し、慎み深く、礼儀正しく、旅人をもてなし、よく教えることができ、酒を好まず、乱暴でなく、寛容であって、人と争わず、金に淡泊で、自分の家をよく治め、謹厳であって、子供たちを従順な者に育てている人でなければならない」(3.2~4)


パウロは、教会を運営する監督や執事について、その資格や在り方を縷々説きました。


紀元1世紀の「監督」は、今日の牧師のような存在で、そのためには、自制し、たえず霊的に成長しなければならないというのです。パウロの要求している具体的な資質は厳し過ぎるという一面もありますが、教会の成長と健全性とは、監督の資質に依存しているからだと思われます。


「あなたは、年が若いために人に軽んじられてはならない。むしろ、言葉にも、行状にも、愛にも、信仰にも、純潔にも、信者の模範になりなさい」(4.12)


この聖句は、説教でもよく使われる、よく知られたフレーズです。テモテは、 エペソ教会に派遣された使徒職の代理人であり、当時30代後半から40代前半になっていたと思われ、年が若いからといって、教えや指導まで軽く見られるようなことが起こらないようにとのパウロの親心です。


キリストと金持ちの青年(ハインリッヒ・カール・ホフマン画)


論争によってではなく、実際の行動によって背教者たちを黙らせ、聖書の朗読と解き明かしによって信徒を導くよう教示しました。


以上、「テモテへの第一の手紙」の解説をいたしました。次回は「テモテへの第二の手紙」の解説です。(了)

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