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贖罪の羊 長崎の鐘とウクライナ

◯つれづれ日誌(令和4年5月25日)-贖罪の羊ー長崎の鐘とウクライナ


愛する者たちよ。自分で復讐をしないで、むしろ、神の怒りに任せなさい。なぜなら、『主が言われる。復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する』と書いてあるからである(ロマ12.19)


最近、3人のクリスチャンから、筆者の「つれづれ日誌(令和4年3月9日)-長崎キリシタンの里訪問記」への感想が寄せられ、永井隆の著書『長崎の鐘』の世界、特に原爆犠牲者への追悼文「原子爆弾合同葬弔辞」にあまりにも感動したことが述べられました。


その一人は、現役の福音系の牧師さんで、早速『長崎の鐘』をアマゾンから取り寄せ、何度も読み、礼拝の説教でも使っているということでした。またあるベテランのクリスチャンは、日本にもこれほど見上げたキリスト者がいたのかと感激し、これはクリスチャンはもちろんのこと、全国民が知るべき証言だと言われていました。


【長崎の鐘とウクライナ】


「主与え給い、主取り給う(ヨブ記1.21)。主の御名は讃美せられよかし。浦上が選ばれて燔祭に供えられたる事を感謝致します。この貴い犠牲によりて世界に平和が再来し、日本の信仰の自由が許可されたことに感謝致します。ねがわくば死せる人々の霊魂、天主の御哀憐によりて安らかに憩わんことを。アーメン」


この言葉で締めくくられた永井の弔辞には、原爆によって犠牲になった長崎の浦上と浦上天主堂は、神への「贖いの羊」であり、8000人のクリスチャンに代表される尊い犠牲によって戦争が終結し、日本が生まれ変わるための「燔祭」となったと書かれています。


被爆後の浦上天主堂        長崎・浦上天主堂の上空で落とされた原子爆弾


実際永井は、自ら被爆していたにもかかわらず、医師として、多くの被爆者達の手当を行い、そのため妻緑さんの安否を確かめる暇もなく、4日後にようやく家に帰ってみると、黒く焼けて塊と化した緑さんの亡骸と、傍に残されたロザリオだけを発見しました。 サトウハチロウは次のように、その時の情感を「長崎の鐘」の歌詞に表現しました。


召されて妻は 天国へ別れてひとり 旅立ちぬ

かたみに残る ロザリオの鎖に白き わが涙

なぐさめ はげまし 長崎のああ 長崎の鐘が鳴る


そして筆者は、この度のプーチン・ロシアの理不尽で非道な侵略による悲惨なウクライナ国民の犠牲が、長崎の鐘とだぶって感じられ、ウクライナは浦上天主堂と同じく、世界が生まれ変わるための「贖罪の羊」ではないかとの思いを禁じ得ません。


ウクライナ・キーウ近郊ブチャの惨状  ブチャを視察するゼレンスキー大統領


さてこのように感じていた矢先、中国の元ロシア・ウクライナ大使「高玉生」(こう・ぎょくせい)(74才)氏が、中国の国社会科学院と中国国際金融30人論壇が共催して開いたオンライン・シンポジウムで、昨今のロシアによるウクライナ侵攻について、持論を開陳しました


高氏はこのシンポジウムで、「ロシアの敗北は時間の問題だ」などと発言をしたところ、インターネット上から関連記事が相次いで削除されたというのです。高氏の発言は、ロシア寄りの姿勢を維持する中国政府の立場と「異なる見解」を示したから削除されたというのです。


高氏はこの発言の中で、「ロシア・ウクライナ戦争は、結果的に、戦後処理・国連創設などを決めたヤルタ会談(1945年)の枠組みや、東西冷戦の残滓を完全に終結させるきっかけになった」と注目する発言をしました。これは、ウクライナ戦争は、世界が生まれ変わるための祭物ではないかと感じていた筆者のインスピレーションとマッチするものであり、この高氏の発言は、正に「目から鱗」でした。


つまり、「災い転じて福となす」との格言の通り、プーチン・ロシアのウクライナ侵略は、結果的に、西側世界のかってない固い結束をもたらしたただけではなく、ウクライナ国民の犠牲を伴うこの戦争は、世界の新たな国際関係のパラダイムと秩序に向かって進む契機になったというのです。


即ち、「カインは主の前を去って、エデンの東、ノドの地に住んだ」(創世記4.16)とある通り、神は、エデンから追われたカインの象徴とも言うべきプーチンのロシアを使って、そしてウクライナの贖罪の羊によって、西側(神側)が結束し、新たな平和の枠組みを形成する機会を与えられたというのです。


そしてこの度のウクライナ戦争は、ロシアを自然屈服させ、世界が生み直されて、神の国へと一段引き上がるための神の摂理と言えなくもありません。 勿論、これはあくまで結果論であって、本来ならあってはならない戦争であり、むしろソ連崩後のロシアを世界協調に導けなかった私達の責任を痛感しなければならないところです。


【ポスト冷戦の新たな世界の枠組み】


嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、「プーチンロシアの衰退は確定的であり、今のロシアが消えてなくなれば、その後の新しいロシアはNATOに入ればいい。NATOがアジアまでくれば、中国を除いて世界がNATO化する」と語りました。


つまり、冷戦の残滓が一掃され、世界は、(中国を除いて)新たな世界秩序の形成に向かうというのです。それは、神の国への一歩前進を意味します。


筆者も前の「つれづれ日誌」で、次のように書き記しました。


「ロシアもNATOに加盟してはどうか、かってG8に入っていたように。NATOは、神に源を持つ、自由・人権・民主・法の支配という人類の普遍的価値を共有しているので、ロシアもその仲間に入れば、その普遍的価値故に、ロシアの安全は完全に保証されるからです。こうして、西も東もヨーロッパ全体がこのNATO平和機構にはいれば、ヨーロッパの平和、世界の平和と繁栄は確固たるものになるでしょう」


<プーチンの罪と罰>

ハーグにある国際司法裁判所では、ロシア側が主権国家ウクライナへ軍事侵攻したことは「国際法違反」と判定し、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置を出し、また国連総会では、ロシアによる軍事侵攻を「国連憲章違反」であり、国際平和を毀損する行為だとの決議を141ヵ国の圧倒的多数で可決しました。更に西側 41ヵ国国防相会議で、ウクライナに対する援助を国際化、制度化させま した。日本も韓国もこの中に入っています。


確かに、プーチンのお陰で、自由主義陣営はかってない結束を示しています。オースティン米国防長官は「ウクライナはロシアに勝てる」と断言し、実際、ウクライナの頑強な抵抗とゼレンスキー大統領の世界に向けた卓越した発信力と相俟って、ロシアの敗北は、ほぼ決まったと言えるでしょう。そして、700万人を越える子供や女性の避難民を出し、多くの民間人を殺戮し、ウクライナの町を破壊したプーチンは、万死に値すると言わなくてはなりません。


しかし、聖書はこう言っています。


「自分で復讐をしないで、むしろ、神の怒りに任せなさい。『主が言われる。復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する』」(ロマ12.19)


<高玉生氏の発言ーロシア敗北と新国際秩序>

さて前述の 高玉生氏は、現代の戦争について、軍事・経済・外交・世論・情報などによる「混合戦争」だと指摘し、そして、ロシアは戦場だけでなく他の領域でも主導権を失っており、敗北は時間の問題だとし、以下の通り語りました。


高氏はロシア敗北の要因として、a.ソ連解体後のロシアは終始、衰退していく過程が続いていたこと、b.軍事大国(核大国)の地位とは不釣り合いな経済力と財政力(韓国より下位)は、戦争を持続出来ないこと、c.ウクライナの決然とした頑強な抵抗反撃と、西側国家のウクライナへの巨大で有効的な援助があること、d.ロシアは、軍事面だけでなく、経済・政治・外交・世論・宣伝・諜報・情報など各分野でも劣勢にあること、e.そして今回の戦争をいつどんな形で終結させるかという決定権は、すでにロシアの手中から離れてしまっていること、などを指摘しました。


そして高氏は、ロシアは敗戦後、過去の栄光の山河を取り戻すことや、帝国として復活する機会を、完全に喪失するだろうとも述べました。


もともとプーチンの政治的、軍事的行動の目的は、ルースキーミールに象徴されるように、正に旧ソ連圏をロシアの勢力範囲と認識し、ロシア帝国の機構制度を復活させることにあり、共産主義の代わりに、民族主義に陥っているロシア正教を国家統一のイデオロギーに活用したというのです。


そして前述しましたように、高玉生氏は、ロシア・ウクライナ戦争は、1945年2月のヤルタ会談のシステムと東西冷戦の残滓を、完全に終結させ、そして世界は、「新たな国際関係のパラダイムと秩序」に向かって進み始めたとし、ポスト冷戦時代、もしくは冷戦時代の延長が、最終的に終了することになると明言しました。


そしてアメリカと西側諸国は、国連など重要な国際組織の実質的な改革を、本気になって進めることになるというのです。


なお、日本とドイツは、完全に第二次世界大戦の敗戦国としての負い目に別れを告げ、軍備拡張し、より積極的に政治大国としての地位を掴もうとすると述べました。ただし、日独が西側陣営から離脱することはなく、また、平和的発展の方針に背くわけでは決してないとも述べています。


【ポストウクライナの世界】


では高氏がいう「東西冷戦の残滓を、完全に終結させ、世界は、新たな国際関係のパラダイムと秩序に向かって進み始める」とは、具体的には何を意味するのでしょうか。


<ウクライナ戦争は日本の世論を一変した>

前述の通り、ウクライナ戦争は、世界の枠組みを変える転換点になったと述べましたが、それはまた日本の空気を一変するきっかけになりました。


この5月23日、永田町の砂防会館にて、「新憲法制定議員同盟」の主催で、「新しい憲法を制定する推進大会」が開催されました。新憲法制定議員同盟とは、中曽根康弘氏が会長を務める超派閥・超党派の国会議員で構成された組織で、毎年、大会を持っています。


昨年の大会は、憲政記念館て行われましたが、コロナの影響もあって100人位の集会でしたが、今回は700人にも昇る盛況で、改憲への熱気は昨年とは大違いでした。


つまり、ウクライナ戦争が勃発し、日本の政治家や国民の憲法改正への意識が格段に高まっているような気が致します。ウクライナの犠牲の上に、日本も世界も大きく変わろうとしています。


自民党の安倍晋三、中曽根弘文、古屋圭司、新藤義隆、柳本卓治、愛知和男、そして公明党北側一雄、維新足立康史、国民民主党玉木雄一郎、それに経団連、日本商工会議所、日本青年会議所の代表がそれぞれ連帯の挨拶を述べましたが、これらは皆、ウクライナの教訓を意識したものでした。


中でも、野党の玉木雄一郎代表が一番本質的で的確な発言をして、自民の尻を叩いていました。筆者も大会後、大会事務局長の柳本卓司議員と立ち話をし、筆者の持論を熱く語りましたが、柳本議員は大きくうなづかれていました。


筆者は前回、日本国憲法の最大の欠陥は、その無国籍・無理念・無宗教ぶりにあると指摘しましたが、それは、未だ日本に主権がなかった占領時代に「押し付けられた」憲法であったからに他なりません。


「和魂洋才」という言葉があります。明治の近代化の時代は、西洋から科学技術や政治制度を導入しましたが、それはあくまで外的な技術や制度であって、精神性、つまり魂の方は日本製でした。


確かに、ロックの契約思想やアメリカの独立宣言・アメリカ憲法は、「法の支配」を掲げる当時先端の憲法思想であり、その意味では優れた内容を持つ日本国憲法ではありますが、また多くの憲法学者が絶賛するところですが、しかし、国家の歴史・伝統・文化は置き去りにされ、ましてやロックの契約思想や独立宣言の背後に「キリスト教信仰」があったことなどは見向きもされませんでした。


従って、憲法前文は無国籍・無宗教文書であり、憲法9条は日本から主権を奪う条項になっています。そうしてようやく、ウクライナを反面教師に、本気になって本来の憲法をとりもどそうとする気運が復活し始めました。


<新たな世界の枠組み>

ウクライナ戦争を踏まえ、世界は確実に新秩序の枠組みを模索し始めました。それは、権威主義国家が民主主義国家に屈服することにより、二極化から一極化の方向へ向かうのか、あるいは岸田首相が「今まさに『ポスト冷戦』時代が終わりを告げ、国際社会全体が大きな歴史の転換点を迎えている」と指摘したように、ポスト冷戦体制が崩壊し、新たな冷戦時代に後戻りするのか、一体、如何なる新秩序が生み出されるというのでしょうか。


筆者は、ウクライナ戦争は、神の警告として、日本・韓国を含む西側世界のかってない結束をもたらし、かってソ連共産主義が崩壊したように、中国を含む独裁主義・権威主義が葬られるという神の摂理を感じています。


世界は、現下の国連がいかに世界の平和に無力であるかを見せつけられ、国連を抜本的に改革するか、さもなければ「新たな国連」を新設するかの必要性を痛感させられました。そして世界は、民主主義が勝利を収めた暁に、更に民主主義を乗り越えて、一つの主権、即ち神の主権に「大政奉還」されるべきであり、また、それは、歴史の必然であると思料するものです。


ここに至って、ウクライナ戦争の勝利は、東西冷戦の「残滓」を完全に終結させ、新たな国際関係のパラダイム、即ち神の下の一つの世界へと、一段階上がっていく 大いなる転換点であると思われます。


ウクライナの歴史の最大の特徴は「国がなかったこと」だと言われ、多くの国において歴史の最大のテーマが「民族国家の成立とその発展」であるのに比べ、ウクライナでは「国家の枠組みなしで民族がいかに生き残ったか」がメインテーマだというのです(黒川裕次著『物語ウクライナの歴史』中公新書P3)


即ち、モンゴル、リトアニア、ポーランド、ロシア、ソ連など隣国に侵略され、略奪・殺害・支配され、独立を失ってきました。


神は、かって浦上天主堂と8000人クリスチャンを「贖罪の羊」とされたように、今や、このような国なき悲惨な歴史を持つウクライナ国民の犠牲は、正に世界平和と新秩序形成の「祭物」であります。


来たりませ、日本国憲法に神の復権を、そして世界に神の主権を!(了)