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キリスト教神学についての考察② 神学の構造と内容

🔷聖書の知識180ーキリスト教神学についての考察②ー神学の構造と内容


人間の心のはるかな深みには、神を求める欲求と神への郷愁の種が宿っている(教皇ヨハネ・パウロ2世)


神学とは「聖書と信仰の体系的な学び」であり、端的に言えば、神(創世記1章2章)、罪(創世記3章)、救い (創世記4章~黙示録)について論理的、体系的に論じたものと言えるでしょう。


その点から言えば原理講論は正に典型的な神学書であります。 原理講論は聖書の新しい解釈論であり、聖書の奥義を明らかにしたものです。そして、神、罪、救いについて体系的に解説した神学書であります。世に神学書は数多あると言えども、聖書の奥義を解明し、聖書を完全に解釈した点において、原理講論に勝る神学書はないと言っても過言ではありません。キリスト教団からは独善的な神学だとの手厳しい批判もありますが、原理講論を手にした私たちは、究極の神学書を手にした果報者だと筆者は思います。


しかし、この原理講論をより深く理解するためには、今までのキリスト教神学を知り、これと対比することが必要です。何故なら原理講論はキリスト教神学の土台の上に実った果実であるからです。


ハーベストタイムを主宰されている中川健一牧師は、ユダヤ人に感謝しなければならないと強調されています。何故なら、旧約聖書と律法を残し、イエスを生み出してくれた人類の恩人だからということでした。ユダヤ人を迫害してきたキリスト教は悔い改めなければならないというのです。ならば、私たちはキリスト教とクリスチャンに感謝しなければなりません。何故なら、福音と神学を残し、再臨を生み出してくれたからです。


【神学の構造と内容】


ここで、神学の分野や全体的な構造などについて、鳥瞰的に見ておきたいと思います。


神学の分野には、a.組織神学 b.聖書神学、c.歴史神学(教会史、教理史、信条史、歴史思想史)、d.実践神学(教会論、牧会学、宣教学、典礼学)、などがあります。


<組織神学について>


神学の中でも最も中心となるのが「組織神学」(教義学)です。組織神学とは、聖書に基づき、聖書において啓示された真理内容を教義的視点から体系的にまとめ、教会形成と伝道の働きに奉仕することを目的とする学問分野であります。また、キリスト教と他の宗教や哲学を比較してキリスト教がいかに正しいかを証明し、弁証する護教学でもあるといわれます。


先ず教義上の真実(神・罪・救い・三位一体・受肉・十字架・復活・終末・再臨・教会・歴史、他)を明らかにし、次に倫理的真実(信仰・希望・愛・忍耐・寛容・犠牲、他)を明らかにするものであり、一般的に、「神論」(三位一体論)、「罪論」、「人間論」、「キリスト論」、「聖霊論」、「救済論」、「終末論」、「再臨論」、「教会論」などによって構成されています。


フィラデルフィアルーテル神学校の組織神学教授・学長をされていたH.ジェーコブズ(1844~1932)の著書『キリスト教教義学』(聖文舎)は、神論、天使論、人間論(罪論)、救済論、キリスト論、聖霊論、教会論、終末論(再臨論)、という構成になっており、やはり、神について、罪について、救いの経綸についてという骨格になっています。


ちなみに『原理講論』では、前編として、創造原理、堕落論、終末論、メシア論、復活論、予定論、キリスト論、後編として復帰原理、再臨論という構成になっている神学書であります。特に講論の特徴として、従来の神学書には言及が少ない歴史観、すなわち神の救済摂理である「蕩減復帰歴史」が詳細に書かれています。


アウグスティヌスは、神学の確立において、聖書に記される諸言語の知識、自然科学、歴史、弁証法、哲学など、聖書をよりよく理解するために可能な限りあらゆる手段を動員するべきであると語りました。


<聖書神学とは>


次に「聖書神学」についてですが、当初 聖書神学は,教義的主張に対する聖書の「証拠章句を見出す学問」でありましたが、18世紀末以後、聖書神学は歴史的、批判的方法をとって発展しました。広義には,各文書の成立や著者問題などを取扱う分野、その思想内容を問題とする分野、釈義などの分野、の総称であり、狭義には,聖書の神学思想を取扱う分野をさします。


それまで組織神学(教義学)の補助的役割を果たすにすぎなかった聖書神学が、正統主義的教義学から脱却し、聖書の文学的・歴史批評的研究を旗印に近代的な学問として出発したのは19世紀以降であります。それまでのところ聖書の研究は、単に正統主義的教義学を擁護し、それに根拠を与える護教学の位置にとどまり、聖書そのものの歴史的・批判的研究への試みは、教義学の壁の前に阻止され続けてきました。


聖書の歴史的研究は、20世紀に入るに及んで飛躍的に進展し、とりわけドイツの宗教史学派のブルトマンを中心とする研究は目覚ましく、この時期に聖書の「歴史的・批評的研究方法」が、聖書神学の学問的性格として定着しました。


ローマ・カトリック教会と東方教会の神学が伝統をよく保持したのに対して,プロテスタント神学は近代の諸潮流によって大きな影響を蒙むりました。ことに啓蒙主義以後,聖書解釈に歴史的・批判的方法が適用され,聖書神学が発展をとげると同時に,教義に対する合理的批判も盛んになり,自由主義神学の成立を促すことになります。


【神学の命題と論点】


神学的命題として、a.神は存在するか、 神は如何なる存在か、神は何故この世界を創ったのか、b.神が造った世界に何故悪が存在するのか、c.人間の罪とは何か、d.イエス・キリストとは誰か、e,三位一体論について、f,十字架による贖罪と復活の意味とは何か、g,終末とは何か、再臨とは何か、h.歴史の意味とは何か、といったことが挙げられます。


主だった神学論争として、a.三位一体論争(アタナシウス派、アリウス派、ネストリウス派、単性論)、b.キリスト論に関する論争(イエスが被造物であるか否か)、c.マリア論争(マリアは神の母かキリストの母か)、d,堕落の原因について(堕落高慢説か、淫行説か)、e,イエスの復活は肉体を伴うか、f.聖像論争(聖像・聖画は偶像か否か)、g.フィリオクェ論争 (聖霊発出論争)、g.再臨論(再臨はいつ如何なる方法で来るか)、などがあります。


【神学の時代テーマと学び】


キリスト教神学の歴史とそのテーマは大まかに分けて、a.最初の100年間の使徒的時代(新約聖書の諸文書の成立)、b. 100年~451年(カルケドン会議)の教父時代(三位一体論、イエス・キリストのアイデンティティ-の確立)、c.451年~1500年の中世時代(信仰と理性の関係、サクラメントの確立)、d.16世紀が宗教改革の時代(信仰義認、聖書主義)、e.近代(福音主義と自由主義神学)、f.そして現代(終末、再臨)、となります。


中世カソリック教会が「神論」に集中し、近代から20世紀までのプロテスタントが「キリスト論」に集中し、現代のペンテコステ派などの教派が「聖霊論」に集中しているという見方があり、また20世紀の神学は、「キリスト論」と「終末論・再臨論」という内容に帰結している、即ち、「キリストとは何であるか、イエスとは誰であるか、今は如何なる時であるか」がテーマであるといわれています。


前述しましたように、科学が万物を研究し、哲学が人間を研究するものであるとすれば、神学はまさに神を研究する学問であります。神が全ての存在の根源である以上、神を研究する神学こそ「学問の中の学問」と言っても過言ではありません。「神を知ることは知識のはじめ」(箴言1.7)とある通りです。そして神学研究を専門にできる人間は限られた少数であり、その意味で神から「神学研究という賜物」を付与された人は、選らばれし人と言えるかも知れません。


神学の学びは、聖書を読むことから始めて、著名な神学者の古典的著作を理解することだといいます。

例えば、キリスト教最大の神学者アウグスティヌスの著作、カトリック神学の頂点であるトマス・アクィナスの『神学大全』、プロテスタント神学の清華であるジャン・カルヴァンの『キリスト教綱要』などの神学書です。


左から*アウグスティヌス、 トマス・アクィナス、 ジャン・カルヴァンの肖像画


しかしそこまでは及ばすとも、「自分の信仰を厳密に理解しようと試みたものこそ、それと知らずに神学した人である」(ジャン・ピエール・トレル著『カトリック神学入門』)との言葉にもありますように、肩の力を抜いて、「自らの信仰を体系的に理解していく」ことが神学といえるのではないでしょうか。


以上、神学の分野、組織神学の構造、神学の論点、時代的課題、及び原理講論との対比などについて論及しました。(了)






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