スパイ防止法を保守団結の象徴に 今こそ勝共・頭翼思想を国の背骨に!
- matsuura-t
- 8月5日
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更新日:8月11日
◯徒然日誌(令和7年7月30日) スパイ防止法を保守団結の象徴に-今こそ勝共・頭翼思想を国の背骨に!
わたしはあなたのわざを知っている。あなたは冷たくもなく、熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかであってほしい。このように、熱くもなく、冷たくもなく、なまぬるいので、あなたを口から吐き出そう。(黙示録3.15~16)
プロローグ
筆者は、自民党の弱体化で、流動化し、多極化する日本の政治的混乱に際し、前回の徒然日誌(7月23日)で述べた通り、手始めにスパイ防止法制定を保守団結の象徴として超党派で取り組むことを提案したい。この取り組みを通じて、改憲という次のステップにつながり、またこれらの制定過程で、真性な保守思想としての勝共思想、即ち「頭翼思想」が日本の背骨として打ち込まれる貴重なチャンスになると信じるからである。

既に参政党の神谷宗幣代表は22日の記者会見で、秋の臨時国会に「スパイ防止法案」の提出を目指す考えを示した。また日本保守党の北村晴男議員は「スパイ防止法の臨時国会(今秋)での成立を目指して、保守派の国会議員との間で意見交換を開始した」とXに投稿し、「今後、オールドメディア、日弁連、左翼活動家、左翼議員、左翼学者、エセ評論家などからの様々な反対や妨害が予想されるが、何としても成立させる」と抱負を述べた。そして誰が中国、北朝鮮、ロシアの代弁者であるかを炙り出すという。更にNHK党の浜田聡前議員も、スパイ防止法の必要性を強調すると共に、左派が政権を取れば、政敵を「スパイ」として弾圧する恐れがあり、万一の場合に備えて、透明性の確保など恣意的運用を防ぐ仕組みを組み込む必要があるとした。
ちなみにスパイ防止法とは、外交・防衛上の国家機密事項に対する公務員の守秘義務を定め、これを第三者に漏洩する行為の防止等を目的とする法律で、通常最高刑は死刑または無期懲役である。主要国家でスパイ防止法がないのは日本だけであり、同盟国から、日本は機密情報を共有出来ないと非難されており、「スパイ天国」との汚名を晴らさなければならない。
かって1979年2月27日、国際勝共連合と自民党の国防関係国会議員が中心となり、「スパイ防止法制定促進国民会議」が設立され、1980年代、「制定促進議員・有識者懇談会」「法律家の会」「言論人の会」「経済的人の会」など、防止法制定ための専門家の会が発足した。更に全国に「スパイ防止法制定促進都道府県会議」を設立して広く国民に訴え、議員立法で第7次案まで作成して成立寸前までこぎ着けたのである。しかし、左派系議員に阻まれて廃案になった苦い経験がある。この顛末については、国際勝共連合編著「『勝共連合かく闘えり』世界日報社P88~131」に詳述されており、その中には、スパイ防止法の資金源を断ち阻止するために、左翼活動家の弁護士によって政治的目的で霊感弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)が設立されたいきさつが書かれている。(P112~121)
では、自民党保守議員や国民民主党右派を含むこれら保守政党は、如何なる理念と思想を核に連帯すべきなのだろうか。それが新しい保守思想としての勝共思想、即ち「頭翼思想」であると筆者は思料する。以下、先ず頭翼思想とは何かを考察し、その上でスパイ防止法とは何かを論じることにする。
【頭翼思想について】
混迷する日本の政治状況を一言で言えば、古い保守思想(右系)が排除され、リベラル思想(左系)が席巻している状態にあると言える。特に政権政党である自民党に著しい。今ほど新しい保守の理念、即ち頭翼思想が必要である時はないと思われる。
<右翼と左翼ーその起源>
実は、右翼と左翼の語源はフランス革命に由来するという。 フランス革命期の憲法制定国民議会において、旧秩序の維持を支持する勢力(王党派・貴族派・国教派など)が議長席から見て右側の席を占め、左側に旧勢力の排除を主張する共和派・急進派が陣取ったことが語源となった。従って右翼は保守的立場、左翼は反体制的立場の象徴である。
しかし、右翼と左翼の起源はもっと古く、イエス・キリストの十字架にまで遡る。聖書には次の通りある。
「さて、イエスと共に刑を受けるために、ほかにふたりの犯罪人も引かれていった。されこうべと呼ばれている所に着くと、人々はそこでイエスを十字架につけ、犯罪人たちも、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけた」(ルカ23.32~33)
そして十字架にかけられた左の強盗が、イエスを罵倒したのに対し、逆に右の強盗はイエスを弁護した(ルカ23.39~41)。イエスは右の強盗を祝福して「あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」(ルカ23.42)と言われたと聖書は記す。まさに聖書は2000前、既に今日の右翼と左翼の出現を預言していたのである。文鮮明先生は、この右の強盗が右翼の起源であり、左の強盗が左翼の象徴だと言われた。言葉を変えて言えば有神論(ヘブライズム)と無神論(ヘレニズム)の象徴とも言える。
ところで、この有神論と無神論の他に、「不可知論」という考え方があり、欧米キリスト教社会では不可知論者が増加してきた。不可知論者は究極的実在、即ち神といったものは人知をもってしては知りえないとする考え方であり、一方、神がいないということも証明できないとする。言わば有神論と無神論の中間に立つ。聖書に「あなたは冷たくもなく、熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかであってほしい。熱くもなく、冷たくもなく、なまぬるいので、あなたを口から吐き出そう」(黙示録3.15~16)とあるが、この段で言えば、熱いとは有神論者、冷たいとは無神論者、なまぬるいとは不可知論者と言える。
日本人の大多数はなまぬるい不可知論者が多数であり、善悪の価値基準においても、残念だが生ぬるさ、曖昧さは日本人の特質になっている。故に日本人はマスコミの煽りや世論の空気に左右されやすく、岸田前首相はこの曖昧な空気に忖度してUC解散請求に走ってしまったのである。しかし現下の混迷期を乗り切るためには、熱いか冷たいかをはっきりすることが肝要である。
<頭翼思想とは>
さて勝共思想(頭翼思想)であるが、これは単なる反共ではなく、共産主義(無神論)の間違いを指摘すると同時に、共産主義思想を克服する思想である。端的に言えば、左翼を克服し、左翼と右翼を利他主義によって昇華して一つにする思想である。「頭翼」という言葉は聞き慣れない言葉だが、「右翼」と「左翼」を高い次元で総合するという意味があり(両翼)、政治的には勝共思想、思想的には統一思想のことを、表現を変えて「頭翼思想」と呼ぶことができる。
頭翼思想は、左翼思想である共産主義から増悪心、階級的闘争心、物質主義を、右翼思想である民主主義・自由主義から利己主義、党派主義、格差を取り除いて、「為に生きる」という利他主義によって一つにする思想であり、勝共連合の創始者文鮮明先生は、次のように言われた。
「頭翼思想は、人の四肢五体を動かす頭に相当する中心思想です。それで頭翼思想というのです。
右手も左手も、実は同じ体に付いているものです。頭がなければ、それらは互いに他人同士のように闘いますが、頭が中心に定着して入れば、右手も左手も共に頭の命令に従って、体全体のために働く一つの共同体になるのです」(み言)
つまり、頭翼思想は神様の思想、即ち神主義(Godism)であり、神主義とは、人生観、世界観、歴史観を父母なる神を中心に考える思想である。従って右翼と左翼は頭翼、即ち神において統合することができる。1991年11月30日、文鮮明先生が突如、北朝鮮を訪問し、12月6日、金日成主席と会見したが、この「不倶戴天の敵」と見られていた2人の電撃的な出会いは、まさに頭翼思想の実践であった。
故に、前記してきた日本の危機を克服するためには、先ず反共によって共産主義の間違いを糺し、次に勝共によって共産主義を克服し、そして頭翼思想(神主義)によって右翼と左翼を一つにしなければならない。反共→勝共→頭翼、これが混迷する政局を収拾する唯一の処方箋である。
【スパイ防止法制定は保守団結の象徴】
さて前述したように、筆者は、参政党、日本保守党、NHK党、国民民主党右派、 日本維新の会、それに自民党保守派を加えて、スパイ防止法制定に取り組むことを提案する。この取り組みを通じて新しい保守の理念(頭翼思想)が国家・国民に浸透し、国の背骨として打ち込まれと思料する。著書『勝共連合かく闘えり』には次のようにある。
「スパイ防止法制定促進国民運動は、結果的に制定には至らなかったが、それまでバラバラだった保守の勢力を結集したという意味においては、歴史的に意味がある成果を上げたと言えるだろう。保守派の国民が、様々な政治的立場を超え、スパイ防止法制定の一点に集約・連携して、大きな国民運動を起こすことができたのである」(P88)
ちなみに第2次安倍政権で、2013年12月6日に成立した「特定秘密保護法」は、スパイ防止法案の第5次案から第7次案に近い内容になっており、国民運動の結実の一つと言える。今回、超党派でスパイ防止法を制定する当たり、「スパイ防止法制定促進国民会議」を復活させてはどうだろうか。
ではスパイ防止法とは如何なる法律なのか、何故必要なのか、如何にして制定すべきか等々を、以下においておさらいしておく。
<スパイ防止法とは>
スパイ行為とは、外国に通報することを目的に、不当な方法で外交・防衛秘密を探知、収集して、それを外国に通報することをいう。即ちスパイ行為とは、敵対関係にある国家、団体、階級などの一方から秘密に情報収集を行い、それを他方に与える者、またはその組織のことで、各国ともスパイ行為はスパイ防止法によって重刑に処すのが普通である。
「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」、即ち「スパイ防止法案」は、1985年6月、自由民主党所属議員が衆議院に議員立法として提出したスパイ行為を処罰する法律案である。国際勝共連合などが成立寸前まで盛り上げたが、同年の第103回臨時国会で審議未了廃案となった。
法案は全14条と附則により構成され、「外交・防衛上の国家機密事項に対する公務員の守秘義務」を定め、これを第三者に漏洩する行為の防止を目的とする。また、禁止ないし罰則の対象とされる行為は既遂行為だけでなく未遂行為や機密事項の探知・収集といった予備行為や過失(機密事項に関する書類等の紛失など)による漏洩も含まれる。最高刑は死刑または無期懲役(第4条)である。
嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、日本にスパイ防止法ができない理由にマスコミを挙げている。高橋氏は「特定秘密保護法のときもそうだったが、マスコミが報道の自由が侵害されると強く主張し、大きく騒ぎ立てたことが大きな障壁になっている」と指摘した。その結果、政治家や政府が慎重になり、防止法の成立が先送りされ続けているという。高橋氏はスパイ防止法の特殊性と問題点を次のように指摘した。
一つは特殊工作(ハニートラップ・マネートラップ)の実体と危険性である。実際に外交官や諜報機関関係者が「ハニートラップ」(異性を使った誘惑工作)に遭い、機密を漏らすケースがあると警告した。
次に法整備の課題である。日本は現状、イギリスやアメリカのような本格的なスパイ防止法制を持たず、2013年12月に成立した「特定秘密保護法」だけに依存しているが、特定秘密保護法の適用範囲が限定的で、スパイ行為や工作に対する抑止・摘発機能には限界があるという。
スパイ防止法は「軍事や安全保障上の機密を守るための法律」であり、国益を守るためには不可欠であり、一方で、表現の自由や報道の自由を尊重する仕組み(免責や報道の除外規定)を法律に明記すべきと提案し、政府・議会・メディアの三者で、目的と範囲を明確に合意する仕組み作りが必要とした。
<スパイ防止法が必要な理由>

では、今何故スパイ防止法が必要なのか、以下、3点を述べる。
第一は主要国の中で、防止法がないのは日本だけである。
自衛権は国際法(国連憲章第51条)で認められた独立国の固有の権利で、国家機密や防衛機密を守り、他国の諜報活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為であり、世界ではどの国もスパイ行為を取り締まる法整備を行い、国家の安全保障を脅かすスパイには厳罰で臨んでいる。しかし日本にはスパイ行為を取り締まる法律そのものがなく、スパイ行為そのもので逮捕できないのは、世界で日本一国だけである。
初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は、警視庁公安部や大阪府警警備部などで北朝鮮やソ連、中国の対日スパイ工作の防止に当たってきたが、次のように語っている。
「我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜やってきた。しかし、スパイを逮捕・起訴しても、せいぜい懲役一年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体だ。なぜ、刑罰がそんなに軽いのか。どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国にはないからである」(『諸君』2002年12月号)
佐々氏は、「他の国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動などを、出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法違反、窃盗罪、建造物(住居)進入などの刑の軽い特別法や一般刑法で取締らされ、事実上、野放し状態だった」と明言した。ちなみにスパイ罪は、アメリカ、ロシア、中国、北朝鮮では死刑、イギリス、フランス、スウェーデンでは無期懲役である。
第二は、スパイ天国の汚名を晴らなければならない。スパイにとって、日本は、重要な情報が豊富な上、捕まりにくく、万一捕まっても重刑を課せられない。即ち、日本は最先端の科学技術をもち、また世界中の情報が集中している情報大国でもあるが、日本ではいくらスパイ行為を働いても重罪にならず、スパイ活動はほとんど自由である。つまり、スパイにとっては何の制約も受けない「天国」だというのである。
このことは、1954年、KGBの前身・MVD中佐のラストボロフ氏が、アメリカに亡命して証言し、日本における一大スパイ網が明らかになった。それによると、旧ソ連に抑留された日本人の中から8000人以上をスパイ要員として、日本や米軍の秘密情報収集のため操っていたという。
また1979年10月24日に米国に亡命した旧ソ連KGB少佐レフチェンコ氏が「日本はKGBにとって、もっとも活動しやすい国だった」(『KGBの見た日本』)と証言し、1978年6月、イギリスに亡命した旧ソ連軍の情報部(GRU)将校、スヴォ―ロフは「日本はスパイ活動に理想的だった」と証言した。
第三は、ファイブアイ加盟の障害である。日本は機密情報共有枠組み「ファイブアイズ」構成5カ国(米英加豪新)と各個別の形で連携しているが、ファイブアイズとしても、日本の参加、即ち「シックスアイズ化」への期待の声が出ているが、スパイ防止法がないのがネックになっている。
つまり、防止法がないことが、ファイブアイズ側が日本の加盟を望んでいるのに、加入出来ていない障害となっているのだ。日本が「シックスス・アイ」となることを希望するなら、日本の機密情報保持の文化と能力に大幅な変更だけでなく、スパイ防止法制定が欠かせないという。
第2次安倍政権で成立した「特定秘密保護法」にしても、その成立の背景には日米韓における軍事情報の共有問題があった。日本の情報漏洩リスクが高いことにより、機密度の高い情報の共有ができなかったのである。しかし特定秘密保護法ではスパイを取り締まるには限界がある。近時、特に中国によるスパイ行為が警戒されているが、スパイ罪を規定し、スパイを発見・摘発するための捜査権限や、インターネットなどを含めた捜査監視体制の構築を可能とする、包括的なスパイ防止法の制定が急務でる。
以上、スパイ防止法が必要な理由を挙げ、その法制化が待ったなしの状況にあることを述べ、手始めにスパイ防止法制定を保守政党団結の象徴として取り組むことを提案した。そして、その理念として「頭翼思想」を日本の背骨とすることの必要性と緊急性を述べ、頭翼思想とは何かを明らかにした。
それにしても3回の選挙に大敗した親中派の石破首相が、いまだに政権にしがみつくのはみっともない。日本には「散り際の美学」という言葉があり、咲き誇る桜の美しさはまさに散り際にあるという。武士にも「滅びの美学」があり、運尽きて死すとも滅びの美だけは残す。北村晴男議員は「石破首相の行動は全く美しくない」とXに投稿されたが、石破首相の政権維持の醜態はおよそ日本の美学からほど遠い。今こそ日本人はぬるま湯から脱して、熱いか冷たいかをはっきりすべき時である。(了)
牧師・宣教師 吉田宏