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🔷カルヴァンの研究者渡辺信夫牧師と『キリスト教綱要』についてー東京告白教会を訪問して

2022年1月30日
読了時間: 9分

更新日:9 分前


🔷つれづれ日誌( 令和4年1月26日)-カルヴァンの研究者渡辺信夫牧師と『キリスト教綱要』についてー東京告白教会を訪問して


私は進歩しつつ書き、書きつつ進歩する人の一人であることを告白する(アウグスチヌス書簡第7)


プロローグ


上記のフレーズはジャン・カルヴァン著『キリスト教綱要』第一篇の冒頭に書かれている言葉です。カルバンがアウグスチヌスの言葉を引用して掲げた言葉で、このフレーズにカルヴァンの思いが込められています。


カルヴァンもプロテスタントの神学を打ち立てるに当たって、試行錯誤し、格闘しながら、書いていったという気持ちが伝わってきます。


【東京告白教会】


さて筆者は、令和4年1月16日、世田谷にある「東京告白教会」の礼拝に参加いたしました。この教会は、カルヴァンの『キリスト教綱要』全巻を日本語に翻訳された渡辺信夫牧師が開拓され、60年に渡って牧師として導かれた教会であります。


筆者は宗教改革の巨人の一人であるカルヴァンを学んでいく中で、渡辺牧師がカルヴァン研究の第一人者であることを知りました。渡辺信夫著『カルヴァン』(清水書院)を読む中で、渡辺牧師が開拓された東京告白教会に行って見たいという衝動に駆られた次第です。


千歳烏山で電車を降りて、何人かに道を聞きながら、やっとの思いで礼拝が始まる10時迄に辿り着くことができました。ある意味で予想に反して、そこは一見バラック建てかなと思うような外形で、礼拝室には10人位の信者が礼拝に参加されていました。


実は渡辺牧師は昨年96才で亡くなられ、今は金宣教師が礼拝を守っておられました。礼拝後、渡辺牧師と共に60年もの間当教会を見守って来られた長老の徳永さんの案内で、故渡辺牧師の蔵書室を見せて頂き、色々と親切に渡辺牧師とカルバンについて教えて頂きました。


おまけに、渡辺信夫著『カルヴァンのキリスト教綱要を読む』、そして同著『教会論入門』を頂き、大変恐縮いたしました。


筆者は、何故「告白教会」という一見珍しい教会名にしているのか、気になっていましたので、この長老に名前の由来を聞きましたところ、これは、ナチスの教会政策に反対した牧師、信徒たちが結成した組織であるドイツの告白教会から名前を取ったということでした。


【渡辺信夫牧師とは】


ここで、簡単に渡辺信夫牧師(1923年~2020年3月27日)について述べておきます。


<略歴>


渡辺信夫牧師
渡辺信夫牧師

渡辺牧師は、日本の神学者、牧師で日本キリスト教会の指導者でした。1949年京都大学文学部哲学科卒し、1977年「カルヴァンの教会論」で京都大学文学博士を取得しました。またジャン・カルヴァンの『キリスト教綱要』の翻訳者として知られています。


クリスチャン・ホームに生まれ、戦争中は日本軍の将校として戦い、また神社拝礼を指揮しました。しかし、神学を学ぶ過程で、神社参拝が神の前に偶像礼拝の罪であるという意識を持つに至り、そこから神社参拝を拒否して獄死した韓国長老派の朱基徹(チュ・キチョル)牧師について学び始めたといいます。また憲法改正には反対している護憲論者でもあります。


1949年に伝道師となり、1958年、開拓伝道を始め、日本キリスト教会東京告白教会を設立しました。渡辺牧師は、日本基督教団の理念である「公会主義」の存在自体を幻想として否定しています。公会主義とは、いかなるキリスト教の教派にも属さないキリスト教無教派の理念、理想であり、日本基督教団は公会主義を継承する団体であります。


<カルヴァンの回心について>


カルヴァンは24才頃、信仰の劇的な転換を伴う回心体験をしていますが、この回心がいつどのようなものだったかは、多くを語っていませんので定かではありません。この回心について、渡辺牧師は著書『カルヴァンのキリスト教綱要を読む』の中で、次のように語っています。


「この回心は、一応キリスト教と言われるものから、本式のキリスト教への回心でありました。それは福音主義、あるいはプロテスタンティズムへの回心と言えると思いますが、それよりむしろ、知識的・観念的信仰から、命を賭ける信仰への飛躍であると私は理解しております」(P67)


つまり、カルヴァンがいう「突然の回心」というのは、ある時一挙に突如として起こったというより、カルヴァンの思考が熟していき、あたかも蚕が孵化するように、ある日、「信仰的決断」によって飛躍し変えられたというのです。


ここに、カルヴァンの徹底した神中心主義が確立されました。筆者も、信仰ないしは信仰告白とは、ある種の「決断」であると言えるのではないかと思っております。即ち、神を信じる決断、キリストを受け入れる決断、罪を告白する決断、罪の贖いを信じる決断、新生に預かる決断であります。


【カルヴァン著『キリスト教綱要』】


渡辺信夫訳 カルヴァン著『キリスト教綱要』
渡辺信夫訳 カルヴァン著『キリスト教綱要』

ここで渡辺信夫牧師が日本語に翻訳されたというカルヴァン著『キリスト教綱要』について骨子をまとめておきます。


キリスト教綱要の初版は、1536年、スイスのバーゼルで上梓され(27歳)、1559年に最終ラテン語版が出されました(50歳)。原題は Institutio Christianae Religionisです。


<綱要の骨子>


この本は、「キリスト教の教えの手引き」「キリスト教教理の体系的な解説」、即ち、聖書に基づいてキリスト教の教えを体系的に説明した神学書です。宗教改革期のプロテスタント神学を代表する著作であり、その後の改革派教会、長老派教会などの神学に大きな影響を与えました。


初版は比較的小さな、六章からなる入門書でした。しかし、カルヴァンは生涯にわたって改訂と増補を重ね、1559年の最終版では、全4巻・80章からなる大規模な神学体系へと発展させました。


カルヴァンは、使徒信条の構成を基本的な手がかりとして、キリスト教信仰を四つの大きな領域に整理しました。


第1巻は創造者なる神についての論考です。神とはどのようなお方か 、人間はどのように神を知るのか 、 聖書の権威と聖霊の証し 、 創造・摂理・神の主権についての考察です。


第2巻は贖い主なる神についての論考です。キリストによる救い 、 人間の堕落と罪 、 旧約聖書と新約聖書 、キリストの神性と人性 、 キリストの死と復活による贖いなどが考察されています。


第3巻はキリストの恵みを受ける方法です。聖霊の働きと信仰生活 、信仰と回心

、 義認と聖化 、祈りとキリスト者の生活、神の選びと予定説 、 最後の復活と永遠の命などが考察されています。


第4巻は教会と救いの外的な手段についての論考です。信仰を育む教会の働き、 教会の本質と職制 、 洗礼と聖餐 、教会の規律と統治 、国家と市民政府などが考察されています。


この構成を見ると、カルバンが予定説だけを論じた神学者ではなく、神、聖書、罪、キリストの贖い、信仰、教会、国家まで、キリスト教信仰全体を一つの体系として説明しようとしたことが分かります。


<カルヴァンが最も重視したこと>


本書を理解するうえで、次の三つが特に重要だと思われます。


第一は神を知ることと、自分自身を知ることです。『キリスト教綱要』の冒頭で、カルバンは神を知ることと自分自身を知ることが深く結びついていると論じています。


人間は神を知ることによって、自分が何者であるかを知ります。同時に、自分の罪や弱さを知ることによって、神の恵みを必要としていることを悟ります。


箴言に「 主を知ることは知識の初めである」(箴言1.7)とありますが、カルヴァン

にとって神を知ることは、単なる宗教知識の獲得ではありません。神の前で自分を正しく理解し、神に信頼して生きることにつながっています。


第二に救いは人間の功績ではなく、神の恵みによるという理解です。


カルバンは、人間は罪によって神から離れており、自分の力や善行だけで救いを獲得することはできないと考えました。


救いの中心にあるのは、イエス・キリストの贖いです。そして、人間がキリストの救いにあずかるのは、聖霊の働きによると説明します。


この点で、カルヴァンはルターと同じ宗教改革の基本原理を共有しています。即ち、人間の功績ではなく神の恵み、善行による救いではなく信仰による義認、人間の誇りではなく神への栄光を重視しました。


第三に神の主権と予定説です。


カルヴァンは、神の絶対的な主権を重視し、人間の救いは最終的に人間の意志や功績によって決まるのではなく、神の恵みと選びに基づくと考えました。 「みまえにきよく傷のない者となるようにと、天地の造られる前から、キリストにあってわたしたちを選び」(エペソ1.4~5)とある通りです。


但し、予定説は重要な教理ですが、それは神の主権と救いの恵みについての、より大きな神学体系の一部であり、『キリスト教綱要』全体を予定説だけに還元してはなりません。


マルティン・ルターは、罪の苦悩の中で「どうすれば神の前で義とされるのか」という問いを強く追究しました。一方、カルヴァンは、聖書全体を通して、神が創造から救い、教会、歴史に至るまで、どのように働かれるのかを体系的に説明しようとしました。


『キリスト教綱要』は、16世紀の宗教改革を理解するための基本文献であるだけでなく、現在の改革派・長老派神学の土台を理解するうえでも重要です。


また、聖書解釈、救済論、教会論、政教関係などを一つの体系の中で扱っているため、キリスト教の教理が互いにどう結びついているのかを学ぶことができます。即ち『キリスト教綱要』は、神を知り、人間を知り、キリストによる救いを知り、神の前で生きるための体系的な神学書であります。


【徳永長老のこと】


さて、礼拝から数日後、徳永長老から、私に電話がかかってきました。十日市場で会って色々話しましょうということなり、早速近くのマクドナルドでお会いした次第です。


驚くべきことに、なんと徳永長老夫婦は私が住む十日市場の、すぐ近くの若葉台に住んでいるというのです。実はこの東京告白教会は、地元世田谷に住んでいる信者は一人もいないということで、皆さん徳永さんのように、あちこちから礼拝に通っているというのです。


私が福音派の牧師だと説明すると、今、告白教会は無牧(牧師がいないこと)状態なので、聖餐式ができないので困っている、吉田牧師に頼もうかな、などと冗談まじりに話しておられました。


そして、告白教会も往年には30人位の礼拝を保っていましたが 、高齢化で段々少なくなっていると胸の内を吐露されていました。


徳永さんの奥さんも敬虔なクリスチャンで、礼拝ではオルガンを弾いておられました。これから、この夫婦とは近所のよしみで、楽しいお付き合いができそうです。


これも、カルバンが取り持ったご縁で、神は不可思議な導きをされる方であると、今さらに感じたものでした。ただ、「私は渡辺牧師と違って、憲法改正に賛成だし、また靖国神社参拝にも賛成ですよ」と、釘をさしておきました。(了)


吉田宏記​
































































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​ユニバーサル福音教会牧師
​家庭連合ポーランド宣教師
   吉田 宏

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